土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

千代ノ皇休場&再出場も難しいということで、 早くも来場所幕下からの昇進枠が3(朝乃山・紫雷・千代ノ皇)まで増えそうな情勢に。
幕下上位の力士からすると、これだけのチャンスというのも滅多にないですから、分かっているだけに余計硬くなるだろうなと。ホントにもう頑張ってほしいと、それだけしか言えません。


2-1貴健斗(突き落とし)海龍1-2
海龍としては、膝の状態がだいぶ上向いてきた貴健斗とまともに突き合っては厳しいかという考えから、張り差しで組み止めにかかる可能性もあるかと見ていたのですが、何の何の果敢に向かっていきましたね。
結果的にある程度余裕をもった去なしで崩されてしまったとはいえ、過去2番、特に島津海戦での呼び込む動きが二度三度出てしまった内容から一転、開き直って、力みが全面に出るくらいの若々しさ、相手に捌かせるくらいの相撲が取れたことは次に繋がると思いたい(希望的観測ですが・・・)。


0-3玉正鳳(押し出し)常幸龍1-2
海龍同様、負けたし、空回りもしたんですけど、玉正鳳らしさは随所に出ましたし、自分を活気づかせるという意味で悪い内容ではなかったのかなと(踏み込み足も左で行きました)。
先場所なら先に上手を引いた後はじっくり構えて、相手の出足を利用する形で技が出ていたところ、この日は積極的に自分から仕掛けていった。これも良し悪しですし、誰より本人が攻めたことを前向きに捉えられるかどうか。3連敗スタートからの新十両という例も過去には沢山ありますから(最近の例でパッと思いつくのは豊山ですが、もっと近々にあったかもしれない)、次は欧勝竜戦かな?とにかく、まずは一つ勝つことですね。

勝った常幸龍は、満身創痍なれど、こういう出入りの激しい展開でアクロバティックに体が動くのは経験と本能の為せるわざか。膝の状態も推して知るべしですが、再十両に向け必死に闘う姿勢は幕下上位の土俵において一服の清涼剤となっています。


3-0竜電(寄り切り)熱海富士2-1
熱海富士にとって一番理想的な立ち合いは、ややつっかけ気味に出ていく呼吸なのですが、竜電が許しませんでしたね。当たり前なんだけど、めちゃくちゃ研究しとるわ・・・と。
ただ、それ自体はさほど悪い影響を及ぼさなかったというか、ガチッと下から左おっつけがハマって食い止める姿勢を作れましたから、これで右を差し負けていなければ・・・というところでした。

ここからは竜電に視点を移すと、いやあ巧いですね、やっぱり。相手の体形の乱れを突いて少しずつ 少しずつ形を良くしていくサマが、もう周到すぎて。
浅いもろ差しの体勢から、左下手狙いを示唆して腰を引かせ、肩透かしからの流れで左下手を引いたのが第一段階。熱海が両掌を重ね合わせて極め上げると頭を付けて食い下がり、熱海先に仕掛けて上体が起き上がったタイミングで右を抜き(ここの動きは映像では追いきれなかった)、逆襲に転じながら左からの投げも合わせつつ右を深く差し直して熱海富士の腰を伸ばしてしまった。ここが第二段階。
そして、これだけ形を作っても、なおも攻め急がずに相手の出方を待つのだから徹底しきっている。
最後は向正面三瓶アナから指摘があった通り、熱海富士がおっつけ直そうと一瞬肘を空けた瞬間を逃さず突いて、決して逃さぬよう腰を吸いつけ向正面赤房側に寄り切った。

体つきとかは全然違うのですが、こういう相撲を見ていたら、師匠(安芸乃島)に似てるなあと思わずにはいられない。持久戦での強さはやはり折り紙付き。苦戦といえば苦戦ですが、それも相手を十分にリスペクトして、勝つために最善を尽くした結果なのかなと思います。





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たまには贔屓力士の話題でも・・・ということで、本日は三段目から。

三段目
1-1諒兎馬(寄り切り)大飛翔0-2
ともに新幕下目前の自己最高位で迎える今場所。
過去3度対戦して諒兎馬の2勝1敗も、先場所は大飛翔が勝利。左差し狙いの大飛翔を諒兎馬が右からおっつけるところ、大飛翔左手で諒兎馬の左腕を手繰って崩しながら右上手を引いたのが勝敗を分けるポイントになった。
この日も展開的には同じ。ただ、諒兎馬としても当然頭に入っていただろうし、体当たりでしっかり圧力をかけられていた先場所に比べ、ふわっと立っての張り差しで自分が浮き上がってしまった今場所という大飛翔側の問題もあって、再現とはならず諒兎馬が振りほどいた。
一旦距離が空いたところから張って左差し狙いの大飛翔に対し、諒兎馬は素早く右巻き替え、次いで左も差して赤房側へ詰める。まっすぐ寄ってしまったので、頻出の負けパターンである左からの小手投げを喰いかけてヒヤッとしましたが、なんとか左を抜き、突きつけた右の腕と左足で踏ん張ると、再び二本入ってからの攻めは見事。右肘を張って相手の左腰につき、苦し紛れの左小手投げを外掛けで崩しながら、最後は頭を相手の顎の下につけ、左をハズに変えての押しで危なげなくケリをつけた。


幕下
0-2佐々木山(上手投げ)出羽大海1-1
土俵下から戻るスピードの角界一早いことが筆者の中で有名なイケメン力士出羽大海。
この日は相手と間合いを止めるための突き、陽動の蹴返し(足首というよりは内もも辺りを蹴っていますが・・・)、俵に詰まった西土俵で一つ前に仕掛けてから、相手の左足を跳ね上げながらの豪快な上手投げと、参考記事(以下)にて記したこの人らしさを全部乗せしたような内容でした。
このスタイル(だけ)では、なかなか・・・というのも本音なれど、魅力的な力士であることに疑いはない。さらに強みを増して、今年はまず14時前後の時間帯で相撲が取れる位置への定着を。


参考




0-2栃神山(突き落とし)土佐緑1-1
ここ数場所上位近辺でやや苦労している栃神山。最高位の一桁まで上がった頃(3年名古屋)にも気になっていたのですが、右四つ左上手(左四つ右おっつけ)で攻めていったときに、右の攻めが緩んで左腰だけをつきつけるような格好になることが多いんですよね。この日も突き押しの相手を右四つに組み止めたところまでは非常に良い流れだったのですが、そこからいつもの癖が出て、また土佐緑もそれを見透かしていたのか、右に開いて裏を取る動きが早かった。
腰をぶつけ合う変則的な体勢から左四つに変わり、これでも栃神山は十分に取れるのですが、右上手の土佐が赤房側から東へ回り込もうとするところ、またも左腰をぶつけながら引き戻さんとばかり腰を入れていくのは強引すぎ。今度は相手が上手とあって押し潰すような投げ(最後は上手離れて?突き落とし)で合わされ万事休すでした。
同じ力士との対戦も増え、相手に相撲を覚えられる分、明確な弱点があるとどうしても苦しくなる。本場所の中で直る性質のものではなく、普段の稽古の中で克服していけるかでしょう。


2-0千代栄(突き落とし)北青鵬1-1
前場所で膝を痛めてから今場所までの準備期間が短く、また、1場所で十両に戻りたいという気持ちが強すぎるあまり相撲が力任せになってしまう。北青鵬ここまでの2番には、その両面の懸念が隠しきれずに顕れている。
優勝した昨年名古屋では、右上手かつ左を差して相手を起こし、きっちり前に出て勝負をつけられていたのが、今は右の踏ん張りが効かないために左を使い切れないのと、肘を張られてさほど意味がない右上手に固執するのとで隙がありすぎ、千代栄の右の突きにあっけなく崩れ落ちてしまった。

それなりに直して出れば段違いに強いのだから、今場所は無理をしなくても・・・と思うのですが、出る以上は悪化させずに勝ち越して来場所に繋ぐという難しいミッションを遂げなければなりません。




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>この日も10年近く頑張っている力士を見ることができたが、何が何でも十両に上がろうとする気力には頭が下がる。なんとか昇進させてやりたいものだ。

さすが御大。短い言葉で我々の言いたいことを代弁してくれる。ホントにもう、現役でいるうちはみんなに「関取になった男」として成功を掴んでもらいたいのよ。そういう思いが切実に伝わる文章を書かねばと、改めて自らに言い聞かせています。


1-1竜風(寄り切り)金峰山2-0
いやいや、四つでこういう相撲を取るんですね。
立合い突き起こしに来る相手に対し、左前廻し狙い。しっかり小指から行ってるので引きつけが効き、腰を浮かせながら右を差しての寄り。顎も引き腰も下りて、土俵際上手を離し、右はハズで押しながら
の詰めなんかも器用なもの。
こういう相撲、こういう姿勢が苦にならないのであれば、突き押し主体で行くよりもむしろ末恐ろしさは増すのかもしれない。緻密さと豪快さは両立可能、照ノ富士を見本に大きく巧く育ってほしいですね。


2-0對馬洋(寄り倒し)欧勝馬1-1
對馬洋は呼び込んで俵に詰まり、欧勝馬の左が内側から入っていたので右を差して堪えることも難しい土俵際だったのですが、あそこから左で上手に手を伸ばして引きながら、軽快なステップで俵伝いに赤房から向正面側へと回り込んでいくセンス・瞬発力は、この人にしかできない芸当という論評で逃げるしかありません(苦笑)
右足を左足の前へ交差させるように滑らせながら、左で上手を引いて右は首を押さえ、右左右と足を移し替えていく足さばきの見事さ、上半身との連動ぶりは筆舌に尽くしがたい。実際に動きを真似てみましたが、こんなん普通に無理でしょw
あの出入りの激しさゆえに、右の巻き替えも一連の流れから付け入られることなく決まり、右四つ十分に組み止めた。ここからの落ち着きぶりも評価のポイント。上手を切ってすぐに頭をつけ、左で巻き替えに来るハナ、ぐいと右の廻しを持ち上げながら前進。土俵際での腰の寄せ、上体の突きつけも厳しく、粘る欧勝馬を寄り倒しに下しました。
角界屈指の反射神経を生かしたサーカス系の動きと、得意四つに組んでからの高い技能。對馬洋の好対照なる2つの持ち味が同時に現れたデモンストレーションのような一番でした。


1-1峰刃(寄り切り)塚原0-2
突き押しの相手に自分も頭でかまして圧力勝ちし、懸命に押し返しに来るところ余裕をもって対応。左でおっつけながら左差し、右は引っ張り込んで組み止めると、今度は右でおっつけながら右上手。十分に胸を合わせ、がぶり寄りで詰める磐石の寄り、正面青房寄りで勝負を決めた。
100点どころか120点の内容。こういう相撲をコンスタントに取れるよう研究を重ねれば、いずれ十両・幕内では留まらない存在になっていくでしょうね。


十両
2-1平戸海(押し出し)玉正鳳0-2
玉正鳳はここまでの2番、番付を上げた要因である左足からの踏み込みが出ていない。
意図は分かるんですよね、熱海富士相手に右足から=突き起こして先手を取りたかった最初の相撲も、前に落ちやすい欠点がある平戸海をもろ手で起こしてからの引きで沈めにかかったこの相撲も(立合いは踏み込まずに定位置)。
今日のような策戦も持ち味の一つだから結果論だけでは言えないし、大事な場所だから「勝ちたい」が前に出るのも当然です。
ただ、こうして星があがらずに追い込まれつつある状況下だからこそ、開き直って磨き上げてきた自分の立合いで勝負してほしいのも正直な思い。ともあれ、次の一番(おそらく常幸龍戦)、どういう立合いでいくか注目しています。


参考 








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