尾上部屋
元小結濱ノ嶋の17代尾上が三保ヶ関部屋から独立して創設。
高校・大学・角界でも同部屋のライバルとして活躍した肥後ノ海(11代木瀬)とは、部屋持ちの親方としても競い合う関係となっているが、尾上の方が1年半ほど遅く引退(平成16年夏)した関係上、創設の時期は木瀬よりも2年半以上遅い平成18年8月であった。
※木瀬部屋が創設された当時、尾上はまだ現役の幕下力士として相撲を取っていた。
独立の時期こそ木瀬に遅れを取ったが、早くから積極的にスカウト活動を行っていたので、独立時にはのちの大関把瑠都をはじめ、日大相撲部の後輩にあたる里山・境澤・白乃波も引き連れ、翌19年にはやはり日大から南(天鎧鵬)と山本山も入門。学生出身力士の獲得レースにおいては、木瀬に先んじる形勢であった。

状況が一変したのは23年の八百長騒動。境澤・白乃波・山本山が八百長に関与したと認定され、引退に追い込まれると、それ以降は毎年のように1人~2人が入門する木瀬部屋を尻目に、一人も学生出身力士の入門がなく、30年九州をもって里山(22代佐ノ山)が引退したことにより、現役の学生出身力士はいよいよ天鎧鵬のみとなってしまった。

尾上自身の不祥事もあって、しばらくは新弟子の獲得自体遠ざかっていたが、把瑠都引退の翌年(平成26年)あたりから徐々に再開。師匠の母校である熊本・文徳高など高校相撲を経験した力士が多いものの、独立当初は消極的であった叩き上げの採用にも精を出すようになっている。
また、29年には師匠の甥にあたる竜虎、30年には実息の濱洲も入門。いずれも高校相撲の経験を持つ血縁力士たちの今後にも注目したい。




・主な注目力士
竜虎 生年:平成10年  出身:熊本 身長:180センチ 体重:129キロ
上記したとおり尾上親方の甥にあたり、おじの出た文徳高校相撲部出身でもある。
29年1月の初土俵から大きな壁もなく順調に出世。去る31年初場所では西幕下2枚目で4-3と勝ち越し、十両の地位は目の前だ。
関取の中に混ぜてしまえば小柄な部類の体型、上半身の使い方なども比較的ぎこちないのだが、とにかく腰から下の力が非常に強く、力士として天性の素質がある。同初場所、一方的に土俵際まで追い込まれながら左上手・右を首を巻く体勢で上手櫓気味に逆転した一番にはその特徴がよく現れていた。
胸で受けることが多かった立ち合いも、一応頭から行くケースが増え、また張り差し・モロ差し狙い・もろ手などバリエーションも豊富で、変化技も時折用いるだけによく意表を突いている。
相手の出足を利用しながら大きく体を開いて打つ出し投げはスピーディー、30年九州では流れの中で相手の足を取ったが、こんな奇手を扱う際にも、持ち上げて運ぶのではなく「寝る」という極意を熟知したかのような動き方をするのだから、その多芸ぶりや勘の鋭さには驚かされた。
何でも出来てしまうゆえに「型のなさ」を指摘される場面もあるが、あまり脇が固い方ではない面も含めれば豪栄道タイプ、過去の力士になぞらえれば若き日の玉の海(玉乃島)型の大器で、将来的には自ずと固めるべき方向性も定まって来よう。


深海山 生年:平成6年 出身:熊本 身長:180センチ 体重:151キロ
22年春初土俵の叩き上げ。27年9月新幕下、翌九州の東47枚目が最高位で、ここ3年ほどは幕下と三段目の往復が続いている。
立ち合いに突き起こして先手を取り、そのまま押し切るのが理想だが、攻めきれず四つに組んでしまうケースも。腰を入れての投げ技に鋭さがある分、組まれると半身になりがち。
相手を押し込んで仰け反らせてから組み止め、丸い体を生かしての寄りで早く勝負をつける富士東(玉ノ井)のような取り口に進歩していけば、幕下中位以上への進出も難しい話ではない。31年は勝負の年だ。


石田(S60 東京 170 102)は、濱栄光の四股名で長く取っていた部屋創設時からの所属力士。31年春は幕下復帰濃厚とまだまだ気を吐く。宮内(H7 熊本 171 171)は、文徳高校相撲部出身。同期同学年の武将山(藤島)と同じような体つきだが、低さを生かして前に出ていくタイプではない分、出世は遅れ気味。立ち合いに張り差しを多用、上体起き気味に相手を視ながら取る相撲も悪くはないし、払いのけるように捌くいなしの技術にも味はあるのだが、今の若さで味があるところを見せている場合じゃない。やはり幕下入りに向けてはもう一回り以上の攻撃力がなくては。
30年初場所初土俵、1年で三段目中位付近まで上がってきた坂林(H11 富山 174 115)も高校相撲出身者。前に出ながら・或いは相手を崩してから中に入って攻めかからんとする手順は良く、センス・スピード・反射神経の良さが目立つ。31年初場所は最高位で大敗も内容的には悪くなかった。
細かい課題の指摘は来年に回すとして、将来的には序盤の突っ張りもいっそう磨き、松鳳山のように多彩な攻めで相手を撹乱するスピード型の曲者を目指したい。