式秀部屋
時津風部屋の元小結大潮は、昭和63年初場所限りで引退して8代式守秀五郎(以下式秀と記す)を襲名。4年後の平成4年に時津風部屋から独立して式秀部屋を創設した。
長く関取を出せずにいたが、停年を1年後に控えた平成24年春場所でモンゴル出身の千昇が20年目の悲願成就。そして、25年1月に8代は退職し、一門外の26代小野川(北桜)が後継者(9代式秀)として新たな舵取りを担うこととなったのである。
※小野川が時津風一門へ移るのではなく、式秀部屋が出羽海一門へと参加する形。


継承から6年ほど経って、先代以前から在籍した力士は4人(若戸桜・潮来桜・宇瑠寅・澤勇)にまで減少。長く部屋を引っ張っていたモンゴル出身コンビ(千昇と大河)の引退と入れ替わるように27年頃から新弟子が増え始め、継承前に二桁を切っていた在籍数は今や20名前後で推移するまでになった。
学生出身や高校相撲の強豪といった相撲エリートは不在で、当代以降は外国籍力士の入門もない。未経験ながら自ら志願して飛び込む力士も多く、部屋頭の163センチ爆羅騎をはじめ170センチ台前半と体格に恵まれない力士も多数。それ故すぐには結果が出ない場合も多いが、全部屋持ち親方中でも随一に明るい師匠の前向きかつ地道な指導によって、勝てずとも挫けずひたむきに前進していく姿勢が着実に根付き、数年前まで目立っていた早期の引退者も居なくなった。
30年は爆羅騎が4年ぶりの幕下復帰。三段目昇進を果たしたり、それが見える位置にまで上がる力士も増えてきて、ゆっくりながらも確かな足取りで全体の底上げが進められている。
今後は、しばしば話題に挙がる精神面のサポートだけでなく、論理立った技術面の指導にも定評がある式秀の手腕がいっそう冴え渡る局面に入っていきそうだ。



主な注目力士
爆羅騎(H6 埼玉 163 108)
入門時に新弟子検査の様子が話題となった異色の短躯力士も、初土俵からはや6年目。
三段目下位での全勝によりデビュー1年で新幕下入りしたが、翌場所は全敗。その後は三段目中位を定位置に一進一退の様相であった。
30年春で都合はじめて三段目一桁の地位に達すると、ここで1点の勝ち越しを収め、4年ぶりの幕下返り咲き。また1場所で陥落した悔しさをバネに今年は再度の幕下復帰と定着を目指す。
いかにも押し相撲向きという体型だが、意外にじっくりと取りたい人であり、勝ち相撲の決まり手でもっとも多いのは寄り切り。おっつけ切れずに差されたかと思いきや、上手を引けばなかなかの小力があり、体を入れ替えるように崩してからの寄り身も三段目中ほどでは通用している。もう一回り体重が増えてくれば、立合いの威力も強まり、取り口全般に好循環を齎しそうなのだが…


西園寺(H6 大阪 171 134)は、顎を引いて前傾姿勢を保ち、頭四つの持久戦も厭わない我慢の取り口でジワジワと最高位(三段目20枚目台)を上げつつある。基本的には辛抱・忍耐の押し相撲型だが、過去にはたすき反りの珍手を繰り出した異能派の側面も。
(H10 大分 168 95)は、出羽疾風を身長・体重ともに小さくしたような筋肉質の体格が目を引く。正攻法の取り口で、まっすぐ踏み込んでの低い押しと食い下がっての下手投げが主武器。三段目定着の地力はありそうだが、意外に序二段上位~中位で苦しんでいる。
先天性の難聴を患うハンデも何のそので奮闘する江塚(H12 静岡 170 87 平成31年春場所よりに改名)は、いよいよ新三段目が目前に迫ってきた。強烈な投げ技に、裾払い・蹴手繰りなどの足技も織り交えての活気溢れる取り口が大いに序二段の土俵を沸かせている。