浅香山部屋
平成23年名古屋での引退後、友綱部屋付きの年寄として後進の指導にあたっていた「平成の名大関」魁皇こと15代浅香山が内弟子2人を連れて平成26年2月に創設。
翌年2月には、部屋閉鎖が決まった朝日山部屋から若者頭・呼出・床山が加わり、裏方不在のまま独立した新興部屋にとって貴重な支えとなっている。

師匠に同行した2人の内弟子(魁渡・魁勝)が幕下上位近辺に定着し、初の関取誕生に向けた熾烈な争いを繰り広げるほか、部屋を興して以降に入門した力士たちの中からも、幕下や三段目上位へと進出する力士が続いており、もっか部屋を取り巻く雰囲気は明るい。
好況感を持続させるためにも、今年中には十両力士を輩出し、幕下の人数もさらに増やしていきたいところだ。
31年は、創設以来はじめて春場所に新弟子を迎え入れなかったが、所属力士数も若い力士ばかりで二桁を越えており、(部屋付き親方がいないことを踏まえても)拡大よりも全体の底上げを重視すべき時期に入りつつあるのかもしれない。



主な注目力士
魁勝(H7 180 148)
高校までは柔道の強豪選手として鳴らし、25年春に浅香山の内弟子として友綱部屋からデビューした。
入門から2年で幕下昇進も壁に当たり、なかなか中位を抜け出せなかったが、30年初場所の三段目優勝を経て、同年下半期以降に開花。最高位付近の九州で5勝をあげると、初の一桁枚数となった31年初場所でも勝ち越し、春場所では遂に5枚目以内に飛び込んできた。
180センチの身長ながら胸で受ける立ち合いゆえ、どうしても圧力負けしやすく前後の揺さぶりに弱かったが、デビュー時から30キロ近く肥り、同じ立合いのまま、上体をぎこちなく反らせながらでも上位級の当たりを受け止められるようになったことが急成長の要因。右四つとの記載だが、突いてくるような相手に対しては、あてがいながら左を覗かせ、右でおっつける型のほうが出足はつきやすいようで、左差し手の返しも様になっている。
ただ、上位で左四つの専門力士に当たり、誘い込まれるように組まれると流石に分が悪く、差すにせよ絞るにせよ右からの攻めにもう一段磨きをかけたいところ。
欲を言えば立合いでかましていきたいのだが、頭だけ下がってしまい、前に落ちやすい傾向を助長するくらいなら現状を通すべきか。


魁渡(H8 新潟 180 158)
中学卒業後の24年夏、(もうひとりの力士とともに)浅香山の内弟子第1号として友綱部屋からデビュー。2年後には幕下昇進を決めるなど順調な出世ぶりであったが、27年初場所で左膝の大怪我を負い長期離脱、序ノ口まで番付を落とす挫折を味わった。
27年九州の復帰以降は1年で幕下に戻るも、中位の壁が厚く一進一退。30年名古屋で初の15枚目以内、九州でも同地位に返り咲いたが、いずれも2勝どまりで今年は上位定着が望まれる。
立合い、頭で当たることは少なく、もろ手や体当たり気味に出ながら突き放す格好が多い。地力・体力の向上で突きの腕が伸びたときは威力十分も、腕が伸び切った状態のまま相手に触れてしまうケースがしばしば見られ、足運びの脆さと併せて払い落とされやすい要因となっている。
デビュー時から指摘されている呼び込むような叩きの多さも改善されたとは言えず、上を目指すために克服していかねばならぬ課題はまだまだ多そうだ。


倉橋(H9 愛知 170 101)
金沢市立工を経て28年夏に入門。三段目で14場所と多少時間はかかったが、小さな体で3年足らずの新幕下は早い出世と評しても良いだろう。
相手の突きを下から下からあてがう際の構えが抜群に良く、同型の翠富士(伊勢ヶ濱)が肩透かしを多用して変わり身の速さを活かすのに対して、この人は飽くまで前へ前へ押し上げて行かんとするのが特徴。圧力負けするケース、差しにくる相手をおっつけきれずに突破されるケースも見られるが、体力・技術とも発展途上の時期においてはやむを得ないこと。我慢に徹する今の相撲を磨き、地道に番付を上げてもらいたい。


魁勇大(H11 神奈川 190 155)
中学卒業後の27年春入門で、デビュー5年目の19歳。
大勝ちも大負けも少ない堅実な星取りで4年目の30年に三段目上位進出、秋から31年初にかけて3場所連続で新幕下に星1つ届かぬ悔しさを味わいながらも、着実に経験・実績を重ねている。
190センチ155キロの堂々たる体躯は、上半身の柔らかみも感じさせ魅力たっぷり。プロフィール上は左四つとなっているが、右足から踏み込んだ際には左からの攻めがなく右半身で受けがちなので右四つになることも多く、31年初場所で左足から踏み込み、右前ミツを引いて寄り切った際の相撲を見ていると、こちらのほうが流れは良いようにも感じる。
いずれにせよ、スケールの大きさを持て余さず活用する術をじっくりと見出しながら、大きく育ってほしい素材である。


魁禅(H5 鹿児島 175 131)
朝日大相撲部を経て28年初場所デビュー。1年あまりで幕下昇進の早い出世は新興部屋の若い叩き上げ力士たちを大いに刺激し、全体の活性化に繋がった。
自身はその後幕下下位の最高位を更新できず、三段目に居る期間も長くなっているが、充実した部屋の稽古環境を追い風に、もう一度上昇のキッカケを掴みたい。
小柄ながら相撲が大きく、深めの上手で振り回しがちな取り口は、得意四つこそ違えど同系統(独立元)の魁錦(友綱)に近い。課題も同じで、体型的には、やはり食いつくか中に入るかの形を伸ばすことで腰の良さを生かしてほしいところ。


以下はフラッシュ形式で。
友綱部屋の元幕下名城國(めいじょうくに)を父に持つ魁清城(H10 愛知 176 105)は、軽量で受けがちな欠点と、腕力が強く廻しを引けばしぶとさを発揮する長所の両方が父譲り。コツコツ体を大きくしながら、まずは幕下を目指す。
埼玉栄高を中退して入門した魁佑馬(H12 東京 171 158)は、28年夏入門から3年足らずの新三段目入り。短躯あんこの体型で左四つ右を引っ張り込む取り口には改善の余地があるものの、常に前へ出ようという姿勢があるのは評価したいポイントである。
中学卒業後の30年春に入門した小島は、デビューからちょうど1年で三段目入りと非常に順調な出世ぶり。柔道経験者であることに加え、筋肉質な体つきや身長・体重の数値、胸で受ける立ち合いも含めて魁勝に近いタイプだろう。柔道経験の名残は少なく、正攻法に徹しているのが早い番付向上の一因と言えそうだ。