土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

2014年11月

では、今年も恒例の全関取レビューを計1月以上を要し、長々と更新していきます。初っ端はやはりこの大横綱から。
予め書いておきますが、振る舞いのことについてはこれまでの場所観戦記などで既に記したものがありますので、この場でとりたてて追記するようなことはありません。


白鵬 14-1
初日~2日目の相撲を見て、「少し取り口が上ずり加減」「下半身の具えが騒がしいのが気になる」と指摘した不安は高安戦で現実のものに。近年追う展開は苦手としていましたから、今場所もどうなのかと見ていましたが、久々の金星配給がよほど良い薬となったのか、そこから復調。終盤は形に拘らず飛び道具も見舞いながら先に先に仕掛けて動的に相手を翻弄していくしたたかさで他の追随を許しませんでした。

年間通して見ると、終わってみれば近年ではもっとも高水準の年間5場所制覇。今年中に大鵬の記録に並ぶとは予想していなかったのが正直なところでした。
賜杯を逃した春場所の終盤で指を負傷し、場所後にはインフルエンザで静養を余儀なくされるなど、体調不十分なまま臨んだ夏場所、さらには翌名古屋となかなか右四つの形になれず、薄氷を踏む展開も多く味わうなど終始取り口に精彩を欠く中でも大崩れはせず、夏は稀勢の里、名古屋は琴奨菊と優勝争いで食い下がった日本人大関にみすみす初優勝の栄誉を与えはしなかったし、コンディションの回復に成功した秋は逸ノ城旋風吹き荒れる中でも14日目の直接対決を難なく制して、第一人者の貫禄を示したといえるでしょう。

来年に向けては、本人も認める通り、「これ以上強くなることはない」ですし、イメージする通りに下半身が動かない場面も散見されるようになってきたのは事実。どんな大横綱でも勝てなくなる時はあっという間・・・ということがあるので確たることは言えず、逸ノ城を筆頭に照ノ富士、遠藤らドンドン若い力士が力をつけてきていますから、白鵬という第一人者をして彼らの若さを羨む機会も多くなることでしょう。
ただ、それでも来年いっぱいに関しては、実力的な部分に関して、
幅の広さ、引き出しの多さを活かした「多少土台が揺らいだとしても、反応で捌き切ることが出来る貯金」は十分で、白鵬を中心とした情勢が動くことはないと見るのが妥当だろうと考えています。
もっとも、精神的な面で「33回」を達成してしまった後に、どれだけ虚無感なく同じ気持ちで土俵に向かえるかは逆説的な不安として過ぎらないではありません。
まあ、その点については、実際どんな顔つきで「達成後」の土俵に上がるかを見てみないことには判断がつかないところですね。
何にせよ、来年以降大横綱白鵬の土俵人生はいよいよ集大成の時期へと入っていくわけですが、様々な意味において、その数年が実り多く、災いなきものであることを願っています。

すでに場所も終わってしまったので、この記事では残り2日の注目取り組みを総まくり形式でピックアップしていきます。

しかし、あの大EDはもし白鵬が優勝できなかった場合(もしくは決定戦にもつれ込んで流す時間がなくなった場合)どうするつもりだったんだろう・・・


14日目
○13-1白鵬(送り出し)日馬富士10-4●
日馬富士真っ向から踏み込んで突きあげんとするも、両足飛び気味で出足なく、白鵬右かち上げで起こしてからすぐさま左へ動いて日馬富士の右を手繰ると、日馬富士足が揃って大きく乱れ、すかさず後ろについた白鵬が難なく送り出して勝負を決めた。日馬富士は自分が取るような相撲を取られ、優勝争いをもう一回りかき回す役割は果たせず。


千穐楽
○竜電(押し出し)大翔虎●
約3年ぶりの序二段優勝を狙う大翔虎でしたが、地力差を覆せずグイグイ前進する竜電の圧力をかわせず完敗。一方、怖がらずドンドン前へ出て連覇達成の竜電。優勝決定の一番同士を比べても体つきが戻ってきているのは明らかで、新年の更なる巻返しに期待が持てそう。

十両
○12-3時天空(内掛け)輝10-5●
勝てば同カードによる優勝決定戦となる一番、時天空立合い左で張って輝きの出足を止めると、右四つに渡り合う。輝、圧力をかけながら左上手を取るも、時天空もほぼ同時に上手を引き、引き付けながら右内掛け。掛投げ気味に揺さぶり、重心を寄せさせておきながら、自らのほうへ引き寄せるように刈り倒し、巨漢の輝を見事裏返しに仕留めた。輝は立合い止められてしまったのが全て。露呈した経験値の差を来場所以降はしっかりと埋めていきたい。


幕内
●8-7千代丸(寄り切り)旭天鵬10-5○
勝てば史上最年長での三賞受賞が決まる旭天鵬。焦る気持ちが大きいと千代丸の叩きを悔いかねないと危惧していましたが、左手を出しながら素早く踏み込んで千代丸に得意のもろ手を出させずに捕まえ、右四つ左上手で一方的に寄り切った。感服・賞賛・畏敬の言葉しか浮かんでこない大偉業の達成。

○14-1白鵬(寄り切り)鶴竜12-3●
立合い右差し、左上手成らず右へいなす流れは先場所通り。終盤戦の流れ全般に共通しますが、高安戦の敗戦を受けて、下半身のバタつきに気づいた所以か、形に拘らず飛び道具も見舞いながら先に先に動いて仕掛けて動的に相手を翻弄していくしたたかさで他の追随を許しませんでした。
あるいは高安戦の負けがなければ、そのままの勢いで相撲を取ってしまい、かえって終盤に2つ以上の落とし穴が待っていたのかもしれませんね。


何にせよこれで優勝32回達成。目下毀誉褒貶ある中ではありますが、驚異的なペース、有史以来屈指の強さでそれを成し遂げた事実だけは動かない。そして来る新年、いよいよ単独1位の33回優勝へ向け、時代の扉を開く時がやって来ます。

駆け足で三賞最終予想記事も更新。今場所は分かりやすい形なのかな?

殊勲 高安
2横綱1大関を下し、文句なしの受賞となるでしょう。

敢闘 栃ノ心
今日負けてたら案外微妙だったのかもしれませんが、14日目終了時点で11勝まで乗せましたから、もう確定印を打ってもいいでしょう。


この2人の受賞が無条件で決まりそうな以上、3人目の受賞は可能性が低いと言わざるをえないですが、あるとすれば

技能 蒼国来 遠藤
敢闘 旭天鵬

の3人か。特に旭天鵬は年齢的なことを考えるなら、二桁勝てば本当に凄いこと。条件付きでもいいので、受賞のチャンスをあげてほしいなあ・・・ 

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