土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

2015年03月

12日目終了時点では思いもしなかったおもろい展開で楽日を迎えた今年の大阪場所。14日目夜の恒例、三賞受賞力士最終予想です。


殊勲
白鵬を倒し、自らの初優勝に望みをつないだ照ノ富士の初受賞が濃厚。

敢闘
楽日の勝敗に関わりなく照ノ富士のW受賞が支持されるはず。11-3で楽日を迎えた千代鳳、臥牙丸も資格十分だが、なまじ三役経験者だけに、もう1つ勝たないと物足りないなんてことを言われる可能性も・・・
候補が枯渇するような場所ならば北太樹にも条件付きで受賞との声が上がって不思議ではなかったが、今回はさすがに厳しそう。

技能
照ノ富士、臥牙丸が敢闘賞候補に挙がった場合、重心の低い取り口が一般に定着した千代鳳はバランス上こちらの候補となるかもしれない。当日選考委員会の流れ次第だろう。


最終予想
殊勲 照ノ富士
敢闘 照ノ富士 臥牙丸(勝てば)
技能 千代鳳

今年の春場所も残り3日。熱中録の更新自体は超スローペースの末に夏場所直前まで続く予定ですが、この記事では最新のホットな状況に照らし、幕内~序ノ口すべてについて最終盤の模様を展望します。

幕内優勝
全勝白鵬 2敗照ノ富士

全勝同士ならともかく、1敗で追う関脇(照ノ富士)の横綱戦をむやみに先送りさせた審判部の取組編成は結果論ではなく適正を欠くものであった。案の定、直接対決の前に2差が出来てしまい、13日目に組まれたそれを制すれば、白鵬の2場所連続、残り2日を残した状態での優勝が決まります。
ただ、明日もしもこの新鋭が殊勲の星をあげる展開が出来ようものなら、白鵬としても残り2日、優勝争いに関しないのが逆に怖い稀勢の里と弟弟子の援護射撃に燃えてくれるであろう日馬富士を相手にするわけで、一気に優勝争いが面白くなる可能性もあります。


三賞争い
殊勲
明日照ノ富士が白鵬を下せば文句なし。敗れた場合は1横綱2大関を喰った逸ノ城が最有力となるが、該当なしの可能性も。

敢闘
照ノ富士の受賞は確定的。初の三賞を狙う千代鳳や復活著しい臥牙丸は残り2日とも勝って、11-3で楽日を迎えれば、当然有力な候補となってくるでしょう。

技能
安美錦の休場、豊ノ島の失速で今場所も該当なしの様相に。。ただ、状況次第で千代鳳がこちらの受賞候補に挙がることはありうるかもしれない。


十両
2敗富士東 3敗貴ノ岩、里山、天風 4敗天鎧鵬

明日富士東×貴ノ岩、天風×天鎧鵬が組まれ、大きく星が動きます。5人(里山と天鎧鵬は同部屋ですが)の間での直接対決も多く残されており、最後の最後までもつれる優勝争いは必至でしょう。

幕下
勝てば3場所ぶりの十両復帰が決定的となる出羽疾風と、勝てばデビュー8場所目(前相撲含む)で幕下優勝という師匠である貴乃花親方と同じタイミングでの快挙を果たすこととなる水田の対戦。
地力は当然、関取経験者の出羽疾風ですが、硬さは大いにあるでしょうから、出足のある水田の圧力をまともに受けてしまえば、軽量もあいまって一気に持っていかれかねない。個人的には水田の優勝も十分にあるのではないかと見ています。

三段目
元幕内千代の国がここまでさすがの地力で6連勝。挑むのは大怪我からの復帰以降、序ノ口だった先々場所、序二段だった先場所とも、7番相撲でいずれも貴乃花部屋のホープ佐藤に敗れて優勝をのがしている琴誠剛。3度目の正直で実力者に一泡吹かせられるか。勝てば、新幕下昇進も決まる。

もう1人6連勝を続けているのが幕下経験者のモンゴル出身荒闘司。明日序二段で全勝を走る諌誠との割が組まれたため、この一番を制すれば、楽日に千代の国×琴誠剛の勝者と決定戦を戦うこととなる。

序二段
幕下上位経験者の諌誠が序ノ口優勝の先場所に続き、順調に勝ち星を伸ばし、前述のとおり明日三段目下位で全勝の荒闘司と対戦。勝てば楽日優勝決定戦への進出が決まります。

決定戦となった場合の対戦相手となるのはかたや8年前の1月以来となる異例のブランクを経て、序二段優勝を狙う37歳の大ベテラン大瀬海、こなたデビューちょうど1年となる16歳の大ノ蔵という対照的な両力士。その経歴差に加え、190キロ近い巨漢の大瀬海と110キロ足らずの大ノ蔵という対照的な体格差からも注目度の高い取組となりそうです。
三段目の土俵に上がる諌誠が敗れた場合は、この一番の勝者が序二段優勝を飾ることに。地力的には断然諌誠なのですが、各段優勝はこれがあるから怖いですよね。。


序ノ口
十両経験者、膝の大怪我を経て前相撲から取り直し、今場所が序ノ口からの再スタートとなる飛翔富士が有望な新弟子や幕下経験者栃港らとの争いを勝ち抜き、唯一の6戦負けなし。明日、序二段に上がっての土俵で木瀬乃翔(5勝1敗)に勝てば自身初となる各段優勝が決まります。

大変遅くなってしまい申し訳ありません。春場所熱中録、本日より更新開始です。
・・・と言いたいところですが、すっかり速報性もなくなってしまったので、今回は元々コンテンツの1つと考えていた立合いの攻防をまるごと更新内容の中心軸に据えることとしました。
あくまで立合いの攻防に大部分の分量を費やし、立合いをどちらが制していたかを私見で記録した上、結果は決まり手のみ記載。決着に至った場面については必ずしも触れない形で幕内全取組を紹介していこうと思っています。

※結局途中から相撲全体についての感想記になっちゃってるなw まあ、あまり深く考えず、立合いの検証は必ずやって、あとは流れでお願いしますということにしましょうか。

1-0阿夢露(寄り切り)千代丸0-1
阿夢露は右を先に付き、左は拳を内側(右手の方向)に向けて開いて、地面に近い位置まで下ろし、少し揺すりながらリラックスさせる形。左前廻し狙いの力士ではあるが、あまり左右の足の位置は変えていない。一方の千代丸は例のごとくもろ手突き狙い。小刻みに体を揺らしながらタイミングを図り、ほぼ左右同時に下ろして、阿夢露の両肩口にもろ手を当てる。阿夢露は左から踏み込むも、前廻しを狙うというよりはあてがうような恰好で両腕を千代丸の脇の下に差し入れた。
千代丸の突きはある程度上手く入り、起こしてからの引きで泳がせてから攻勢に転じることは出来たが、阿夢露の踏み込みも良く、仰け反らせるまでには至らなかっただけに、五分五分の攻防だったと言えそうか。それだけに、その後の展開もどちらにも勝機がある熱戦となった。


1-0豊響(はたき込み)臥牙丸0-1
ともに根は左四つ同士。臥牙丸、先に右を下ろし、左を宙に浮かせた状態で待つと、豊響がリズム良く右→左と付いて当たってくるのに合わせて左を下ろさず、左から踏み込む豊響に対し、右足から踏み込んで勝り、相手の左肩を押しつつ、左はおっつけからハズに変わるような感じで当てて下から起こす体勢を作りかけたが、豊響の右からの突きも強かったため、左足を送れずに、その後の左喉輪で上体も起きてしまった。臥牙丸の方が機先を制した形ではあったものの、6分4分というほどの差もなかったか。
臥牙丸は右喉輪左おっつけの形を持った力士なのですが、最近は立合いでこの日のように右を付いてから左を下ろさずに立って、右から踏み込む形が多く、以前のように左→右と付いて右から踏み込む方が理にかなっていると思うんですよね。。

1-0佐田の富士(押し出し)荒鷲0-1
荒鷲は先に右手を付いてから、佐田の富士が右→左と付いてもろ手に出るのに合わせ、揺すっていた左を付き、右差し左前廻し狙いで左足から踏み込むも、佐田の富士の突きをまともに受けて密着できず、完全に立合い負け。左右の喉輪にのけぞりながら後ろ重心で左前廻しを引っ掛けるもすぐに切れ、下がりながら左とったりで打開を目論むも難なく足を送られて完敗のやむなきに。
荒鷲は合口もあるのか、過去1度も勝てていない佐田の富士にまたも敗れた。先場所同じ立合いから中に入れなかったものの先手を取り優勢を作っただけに、手応えありと見たか今回も変えずに挑みましたが、基本的には相手に押されやすい形と言わざるを得ず、体力差を考えれば無理が多い。逆に佐田の富士をカモにしている時天空の取り口を研究し、もっともっと嫌らしく食い下がる狙いを徹底したい。

0-1勢(寄り切り)蒼国来1-0
勢は左足を引き、右手を先に付いて構えるおなじみの形、蒼国来は右足を少し引き、左右ほぼ同時に下ろして立つ。勢は右、蒼国来は左のケンカ四つながら、蒼国来はいきなり差しに行かず突き起こしてから・・・という狙い。やや両足飛び気味に右手を出し、左は固めて当たり、右喉輪で距離を取りつつ、闇雲に出てくる勢の右をうまく左でおっつけながら差し勝ち、右をおっつけながら差した側に寄せていく体勢で教科書通りに詰めて快勝。
結果から遡れば、狙い通りに進めた蒼国来の立合い勝ちとなるが、二の矢でひとまず前へ出たのは勢。何をもって・・・というのが難しい状況ではあるが、勢の二の矢の出足も蒼国来が突き起こす形を作ったからこそ有機的なものにはならなかったと捉えれば、やはり蒼国来の踏み込みに分があったと見るべきか。

1-0千代鳳(押し出し)琴勇輝0-1
横綱の命令に反し、咳払いをやめなかった琴勇輝とやめた千代鳳みたいな構図で紹介されましたが、千代鳳も先場所の初日や再出場直後のような完全省略ではなく、廻しを二度叩く気合入れにせよ、待ったなしからなかなか手を下ろさず上体をブラブラさせながら間合いをはかる流れにせよ、咳払いをしないこと以外はすべて従来通りにやっているのだから、なかなかにクレバーなやり方だなと変に感心してしまったり(汗)

琴勇輝は左足を少し引き、 千代鳳が左→右と付いて右足から踏み込むのに合わせ、両手をポンポンと下ろし右足から踏み込んでもろ手突き。千代鳳は低い踏み込みで右を覗かせるが、琴勇輝左が上滑りしそうになるも、右で起こしつつ、左で肘を使うようにして差し手を振りほどき喉輪を交えた突きで攻勢。相手の低い上体を起こしきれなかったとはいえ、機先を制したに違いはなく、6分4分で琴勇輝の立ち合い勝ち。
勝負は千代鳳が反応良く左へ叩きながら回り込んだ後、琴勇輝が全然届いていない左の突きを入れて自分で体勢を崩したのが分岐点。千代鳳すかさず寄せて、左を差すと右に回りながら打開を図る琴勇輝の動きにも、低い重心のままに差し手の側に体勢と顔を寄せていく盤石の詰めで応じ、注目の対決を制しています。


1-0大砂嵐 (突き落とし)旭天鵬0-1
旭天鵬、先に左手を下ろし、右を揺すりながら待ち、大砂嵐が遅れて左→右と付くのに合わせて右を付く。
両者同じように右手を出しながら伸び上がるような立合い、大砂嵐は右の突きが抜け、左がかち上げ気味に入った後、旭天鵬の左喉元に当てるような形、旭天鵬は左で相手の右手をあてがいながら、右は喉元の肘をおっつける。以降の流れで一挙に攻め寄せたのは旭天鵬ですが、こと立合いのみの優劣を判断するのは難しいですね。

0-1旭秀鵬(押し倒し)北太樹1-0
旭秀鵬先に左を付いて右を下ろさずに、左足から踏み込むと、北太樹わずかに遅く右手を突き、左手は下ろさずに右足から踏み込む。旭秀鵬はモロ差し狙いかやや立ち腰気味で当たり、実際に二本を覗かせますが、北太樹は低い踏み込みから右で抱え、左もおっつけるようにしながら肘を極め上げる。
たまらず左を抜いた旭秀鵬、安美錦や豊ノ島くらいの技能があれば、一度煽って置きながら差し手を抜くと同時に肩透かしを引くくらいのことはやるのでしょうけど、それは酷にしても下がりながら抜いて引っ張り込むような体勢ではやはり厳しい。北太樹に左を絞られ、苦し紛れに左を首を巻くと同時に右からは掬いを入れ、回り込まんとしますが、北太樹は右の腕を大きく上げながら内側に巻き込んでから肘を突きつけ、腰も切り返し気味にぶつけてこれを許さず。逃げ道を作れなかった旭秀鵬はたまらず崩れ落ち、完敗。
一方の北太樹は先場所の勢いを持続させたような「らしさ」溢れる好内容。立合いも二本入れられたとはいえ、しっかりと低く入り、圧力を十分に加えられたのは北太樹の方。6分4分で北太樹優勢で、その流れを二の矢以降の展開にも有機的に結びつけることができました。

0-1嘉風(寄り切り)常幸龍1-0
常幸龍、右を先に付き左も下ろして両手をついた状態で待ち構えると、嘉風さっと両手を下ろして立ち、当たりながら左へずれてかっぱじき気味の動き。この対戦では幾度も見せている流れで、研究熱心な常幸龍は嘉風が仕切り線の少し後ろから立ってくるのを見て、ある程度読めていたのかもしれません。左右ともあてがうような手の使い方で踏み込み、右手を嘉風の左肩甲骨あたりに引っ掛けて動きを止めると、嘉風が左右とも覗かせにかかるのを左右から挟み付けて対応。横への動きを許さず一方的に寄り切った。
立合いは読み勝ちも含め、常幸龍の優勢。嘉風は過去にも見せている立合いゆえ、決して消極的とは思わないですが、うまく対応されてかき回すことが出来ませんでした。かっぱじきというよりは、左にずれながら右喉輪で起こすような形を作りたかったようにも思われますが、それに関しても常幸龍の左の使い方が良く、腕が伸びなかったですね。

0-1松鳳山(寄り切り)時天空1-0
時天空、両手を先について待ち、松鳳山は両手を素早く下ろしてもろ手突き。時天空左で張って左に動き、松鳳山を泳がせるが、泳がせすぎて上手が取れず。竜頭蛇尾の感はあるが、立合いのケレンで先手を取ったのは確かで6分4分か。
勝負はその後松鳳山向き直り、時天空が左喉輪で起こすのを下から押し上げて攻勢に出るのですが、下がりながらも左右で小気味良く張りや喉元への押しを繰り出して相手を起こし、土俵際右で強烈に張りながら徳俵を利用して右へ回ると、これがあたかも出し投げを打ったかのような体で機能し形勢逆転。これぞ時天空の妙味溢れる取り口だった。

1-0誉富士(はたき込み)德勝龍0-1
右手を付いて左ブラブラから昨年九州、以前の両腕を交差させ同時に下ろして踏み込んでいくスタイルへ変えて以降立合いのつっかけが目立ちまくりの誉富士、この日も1度で合わず。
2度目は綺麗に合って、誉富士とほぼ同じタイミングで両手を下ろし当たる德勝龍。両者ともややつま先立ちの恰好で誉富士は両手を出しながら、德勝龍は右を肩口に当て、左は下から跳ね上げるようにしながら頭で当たり合う。誉富士左をハズに右は喉輪で当たり勝って前へ攻めるも、德勝龍下がりながら跳ね上げた腕を払い落とすようにして左へ回る。
德勝龍らしい対応の上手さで崩したかに思われましたが、思った以上に相手の圧力を受けていたか、バランスが崩れたのは自分の方。横につかんとするはずが足が流れ前のめり。向き直った誉富士はこれを逃さずはたき落とし、自己最高位で白星発進。


1-0安美錦(下手投げ)魁聖0-1
魁聖はいつもどおり両手を下ろして待ち、安美錦呼吸を探りながら両手をほぼ同時について、最近の対戦と同様、右四つ左廻しの相手に対し、背中を丸め当たって、右を相手の左腕に当てつつ左にずれながら上手を引くと止まらずに出し投げで動かしながら右を利かせず、魁聖が差し手を抜くと、左下手を深い位置に持ち替えて食い付き、最後は左からの下手投げで巨体を転がした。
常に前傾を崩さないのはもちろん、出し投げに行くときの顎を引いた姿勢にせよ、下手投げを打つときの右足の開き、左の返し、腰の入れ方(右足で相手の左膝あたりを払いに行くのもそうですよね)まで全てが技術書に書かれている手順通りですが、だからこその美しさが凝縮された一番ですよね。
魁聖とは5場所連続で対戦が組まれていますから、安美錦としては右を使わせず、終始胸を合わせない流れで取りたいというゴールは明確。そのためにここのところはずっとこの日のように当たりながら左にずれる立合いを採用しているわけで、魁聖としては結果的に勝てた相撲もあるとはいえ、決してこの流れを防ぐことが出来た所以のものではないですから、その点、毎回判を押したように同じ立合いをするのではなく、少し左にずれてみるだとか、もろ手で距離を取りに行くだとか何らかの変化を求めたい。

1-0豊ノ島(押し出し)遠藤0-1
豊ノ島、先に右手を付いて待ち、遠藤がさっと右→左と付いてくるのに合わせて左手を下ろす。踏み込みは両者とも右から。豊ノ島腕をクロスさせてもろ差し狙いも、遠藤右おっつけ・左喉輪で起こしてから突き放して攻勢と主導権を握った。
なおも小気味良く突っ張って、左喉輪から右ハズに入りかけたところが勝機でしたが、これが滑るようにして外れ、崩しきれなかった。このあたりは豊ノ島が特段に柔らかい相手というのを差し引いても、部屋の大栄翔あたりの取り方を見て、もう少し喉輪をしつこくというか、押す時間を長くしながら反対側でハズに当てるようなイメージで行けば違ってくると思いますし、現状どうしても単発の突きが多い分、連動せずに相手を見ながら・・・という形になってしまう。もちろん頭で出来ることでもないので、いっそう突き押しを深めていく思いがあるのだとすれば、テッポウなりをやって下半身も含めた突き方全般をいっそう勉強していかなければならないのでしょう。

0-1豪風(掬い投げ)栃ノ心1-0
場所前、豪風相手に技術の伴わない安易な張り差しは墓穴を掘るだけ・・・と書きましたが、栃ノ心は左を先に下ろし、右を構えて待つ体勢から、豪風が左を突き、右を下ろしきらずにリズミカルに立ってくるのに合わせて右を付き、左で張るとともに右からかち上げも合わせて豪風の上体を起こすことに成功。間髪入れず突き立てて先手を取る。やはり突いていく流れでの構えは上体優位で足捌くのが上手い豪風は左へいなして回りますが、足が揃わずに押せていた分、大きくはのめらず。逆襲に転じる相手の頭を左でひねるようにしながら右に回り、最後は流れで大きく返した右からの豪快な掬い投げで勝負を決めた。

1-0碧山(突き落とし)隠岐の海0-1
隠岐の海先に右手を下ろし、左手はリラックスさせた状態で待つと、碧山がほぼ左右同時に下ろして立つのに合わせて左を付き、左足から踏み込んで右を固めて当たり、左を覗かせ、低く当たった碧山の上体を起こす。
引き足の上手い碧山に形を作らないまま猛進して逆転を喰ったのはこの人のもはや容易には直らないであろう悪癖ではありますが、踏み込み自体は力強く必要以上にうなだれるような敗戦ではなかったのかなと。

1-0照ノ富士(突き落とし)高安0-1
高安、腰を割りながら例のごとく2度3度弾んだ後、右手を先に下ろし、左手をブラブラさせながら相手を待ち、照、両手を同時に下ろすのに合わせ、両者タイミング同じうして立ち合う。
右足から踏み込んだ高安に対し、照、右から張って左差しというよりは右上手狙いか?届かなかったが、やや横を向きながら差した高安の左を強烈に絞って差し手を抜かせると、今度はその右を高安が絞り上げながら右を差して返す。すると照、極端に体をぐにゃりと右に倒し、体全体をスウィングさせるようにしてしゃくりながら強引に右を覗かせ、やがて差して右を活かす体勢に持ち込む。
高安もこれで近くなった上手に手が届き、下手も引いて相手の下に入り込んだが、得意とは逆の四つで顔の向きも逆。それでも右の返しは良く、照が盛んにひねる動作を入れるのにも構わず、相手の上手を許さずに果敢に攻めて行ったのは見事だった。
照が反りながら残して戻し、西寄りで膠着した後の流れなんかも高安が一旦引かれた下手を切って顔を差し手の側に寄せると照がこれを引き戻すあたりの駆け引きは一々意味があって面白かった。最後は照ノ富士が誇る腰の重さと柔らかさが勝り、逆転突き落としでの勝利でしたが、互いに死力を出しあった実力伯仲、この日一番の激闘となりました。

0-1宝富士(寄り切り)豪栄道1-0
豪栄道先に右手を付いて待つと、さっと右→左を下ろして立とうとした宝富士つんのめるようになってしまい、つっかけ。2度目は同じ形から成立し、豪栄道は左を付かず、やや早めに立って低く入り、右足から踏み込んで右を固め、宝富士も左を固めながらケンカ四つの差し手争いを目論みつつ、右で踏み込み、やや覗いた相手の左を絞ろうとするが、豪栄道も右からおっつけて起こし、互いに右へ回り合う。
豪栄道、頭を付けて左を返しておいてから右とったりで崩し、左を抜いた宝富士との体が離れる。微妙な距離感が出来、安易に頭を下げて突っ込めばあっさり逆転を喰うぞと見ていましたが、ここから落ち着いていましたね。
宝富士が左で張ったのに合わせて屈んで入り直し、右を深く左を浅く覗かせ前進。土俵際の突き落としも警戒した膝の送りも良く、腰も十分に落とした体勢から最後は腹を押すようにして寄り切り、難敵の挑戦を退けました。
取り口の選択・体の反応とも良く、大関4場所目にして、一番良い形のスタートを切ったといえるでしょう。 

0-1佐田の海(寄り切り)琴奨菊1-0
佐田の海、先に右を付いて左を揺らしながら待ち、琴奨菊左→右と下ろしてさっと立つのに合わせ、左を下ろしきらずに立つ。佐田の海が左右とも固めて、左→右の二本差し狙いかな?琴奨菊左から踏み込んで、この日は左前廻し狙い。届かなかったものの、すかさずおっつけて佐田の海が嫌って抜くところを左差し。
佐田の海の悪い癖として、差すことを主眼においた立合いをする割には右を我慢して差しに行けず、また右を差せないとすぐ強引な投げに行ってしまうことが挙げられますが、この日も右を抜いて上手を探り、それも果たせないと右を首に巻いての投げに出る。
もちろん、やらないに越したことはないのですが、佐田の海くらい長く相撲を取っているとこういう流れは染み付いているもので、分かっていても出てしまうところはあるでしょう。本人も口にしている通り、変えられるとすれば思考の起点となる立合いでということだろうし、前の場所の感想記だったかにも嘉風のような突き放しや前後左右上下への細かい動きを身につけられれば・・・という趣旨のことを書きました。上位初挑戦を経た今場所後にそういった変化が生まれることを期待したいですね。

0-1稀勢の里(押し出し)栃煌山1-0
稀勢の里先に右を下ろし、栃煌山がほぼ同時に左右下ろして立つのに合わせ、左を付き右から踏み込む。そんなに立ち遅れた感は見えなかったが、相手の当たりで完全に上体を起こされ、完全な立合い負け。左を覗かせるもおっつけられ、反対はハズに当てられて防戦。左を返して持ち直しかけるも、体が離れたところで右喉輪左おっつけに行ったのが効かず、二本差されると窮余の巻き替えに乗じて出られ、最後は右おっつけから胸を押されて完敗。
二の矢以降の流れで落ち着いて取れれば挽回できなくもない様相ではあったが、何と言ってもあれだけ立合いが高く弱くてはいかんともしがたい。弱点を抱える相手の左膝のことを気にするあまり、強く当たること以上に当たってからの流れで左方向へ回り突き落としに行くようなイメージを持ちすぎてたのかなあ・・・

0-1玉鷲(寄り切り)日馬富士1-0
玉鷲、さっと左→右の順に下ろし、右から踏み込むと、日馬富士は左→右をほぼ同時に下ろし、右から踏み込んで突き刺さり、左前廻し狙い。玉鷲、やや左ずれ加減でこれを許さず、左おっつけ(ハズ)右喉輪の流れに持ち込みたかったが、日馬富士これを嫌って、引きを入れて距離を取り、間合いを詰めに来たところを屈んで中に入り、 やや腰が入りそうになったものの両前廻しを掴むと、相手の強烈な左小手投げを出させる間も形も作らせず一気に攻め返して白星発進。

1-0白鵬(押し倒し)妙義龍0-1
妙義龍、先に右を付いて構え、白鵬例のごとく右→左と付いて左から踏み込むと、妙義龍左を付いて、両手を前に出し、引くようにしながら二本差す狙い。しかし白鵬がまともに右を固め、左で踏み込み、上体も思った以上に低く突っ込んできたためこれを果たせず。流れかけた右足をバネのようにしならせて出足をつけ、上体を起こして体勢を立て直す白鵬の身体能力には改めて驚嘆させられました。
妙義龍は横綱が張り差しなりかち上げなりに来て上体が上がったところを・・・との狙いだったんだろうけど、稽古場で恐怖を与えつつ、しっかり本割では逆手をつく正攻法に徹してきたという点で横綱が一枚上。
とはいえ、妙義龍の立合いは横綱にとっても意表をつかれるもので、ある程度慌てる展開にはなったのかなと。初日ということもあり、バタつく流れを強いられたことは否めないでしょう。 

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