波乱渦巻いた最終盤の勝負から優勝争いに関する4番の模様をお届けします。
13日目
幕内
●11-2照ノ富士(寄り倒し)稀勢の里10-3○
立ち合い、照はこの日も張り差しからの左四つではなく、右四つ狙い。夏みたく手繰りに行くのを主眼においてというのでもなく、普通に右四つを作りに行きましたが、稀勢の里はやや左にずれながら左おっつけ右喉輪。照が左でおっつけながら前へ出るも、稀勢はやや右が空いたところへ左をサッと差し込んで返し、右上手。
この形で寄るところを照ノ富士が左から振って・・・というのは従来通りの流れなのですが、ここからいつもは照ノが一度ないし数度右からおっつけて前へ圧力をかけ、その反動で稀勢が強引に出るところを続けざまに振って倒すというのが勝ちパターンであるところ、この日は稀勢の左返しが良かったこともありますが、攻めのないままわずかに右上手を探るような仕草を見せたのみ。そこを稀勢が休まず攻め立て、下がる一方になってしまっては・・・というのが勝敗を分けた最大のポイントだったのかなと見ます。
怪我に関しては、巡業中に痛めた左が悪いんだろうという想像は3日目後にも触れた通りで、場所の取組内容から察するところがありましたから、最初はてっきりそちらを痛めたのだと思っていたので、「なんとか体重を逃がすようにして倒れた分大怪我はないか・・・」と観ていたら、怪我をしたのは俵に引っかかるようになった右足でした。小手にせよ、上手投げにせよ、主に左からの投げを繰り出す照にとっては踏ん張るのに使う方の足ですから、これは大変なことになったぞ・・・と。
あの北尾戦の小錦にしてもそうですが、並外れた下半身の強さとバネを持つ照だからこそ一人で土俵を下り、車いすにも頼らず・・・でしたが、実際に出された診断書と照らしあわせても、やはり翌日以降の出場は無謀であったと言わざるをえない。彼の洋々たる前途を望むからこそ、今回の強行出場を「勇気ある」などと評してはならないと思っていますし、今場所後の調整も、大関という地位にある特権も考慮しながら、怪我の回復を何より再優先に取り組んでもらいたいと強く願っています。より詳しくはまた総括記事で。
14日目
●10-4稀勢の里(寄り倒し)鶴竜12-2○
論点としては数えきれないほどあるのですが、取組内容自体は、凡戦と言わざるをえないところで、きわめてノーコメントに近い心境です。
一級の勝負師なら二度目の変化は読んで、手を出しにいくなりしてほしかったが、稀勢の里がそういう力士かといえば・・・ですし、組み止めた後の流れもじっくり行くべきだったというのは簡単なのですが、まあ結局は終始鶴竜がペースを握っていたというしかないのかな。
立合い変化の是非については、今ここで私見を書くことはしませんが、楽しみにこの一番を見守った観客やテレビ桟敷の立場として、せめても「残念」と言えるくらいの権利は保証されるべきでしょう。
千穐楽
○12-3照ノ富士(寄り切り)鶴竜12-3●
一時期そればかり書いていましたが、久々に照ノ富士の良い突き放しを見て、肘のことはあるだろうけど、是非これを主な取り口の一つに取り入れて欲しいなと再実感しましたし、膝の不安とも戦っていかなければならない来場所以降、終始前へ攻めるという型を身に着けるにおいて、当然模索していかなければならない手段であるとも思う。
ともあれ、照が放つ「攻めるしかない」の気迫に気圧されたか、鶴竜は立ち合いで上体が起き、終始受け身。何も出来ないままに土俵を割り、舞台は優勝決定戦へと移った。
決定戦
○鶴竜(上手出し投げ)照ノ富士●
東西入れ替わっての決定戦は気を引き締め直した鶴竜の真骨頂。鋭い踏み込みから素早く両前廻しを浅く取り、引きつけておきながら、照が出るところ、遠心力を使うように体を左に回し、定石通り下へと打ちつける出し投げを放てば、手負いの照ノ富士に残す余力はなく、鶴竜に横綱昇進後初、通算2度目の天皇賜杯が齎された。
本割を見た後、照ノ富士が立ち合いで飛べば鶴竜は落ちるんじゃないかという予感がしていましたし、照ノ富士が決定戦に勝てるとすれば、それしかなかったのかとも思いますが、やりませんでした。
鶴竜には、稀勢の里戦の変化よりも、決定戦の土俵でそういうこと(相手の変化)が頭をよぎったのかということを聞いてみたかった。
もし実現していたとすれば、やや形は違うものの、19年3月の再現となっていたわけですが、あの件が今も長く批判の対象になっているかと言うと、好角家の間ではともかく、一般にはそういうものになり得ていないのは明らかで、つまるところ、今場所のこともあまり大げさに考えすぎる必要はないのだと思う。
・・・ということで、以上、今場所の熱中録でした。今後は明日予想番付を公開し、以降はしばしの充電期間。来月半ばから場所総括→幕下ランキング→有望力士特集→取組別展望という恒例の更新に取り掛かってまいります。
13日目
幕内
●11-2照ノ富士(寄り倒し)稀勢の里10-3○
立ち合い、照はこの日も張り差しからの左四つではなく、右四つ狙い。夏みたく手繰りに行くのを主眼においてというのでもなく、普通に右四つを作りに行きましたが、稀勢の里はやや左にずれながら左おっつけ右喉輪。照が左でおっつけながら前へ出るも、稀勢はやや右が空いたところへ左をサッと差し込んで返し、右上手。
この形で寄るところを照ノ富士が左から振って・・・というのは従来通りの流れなのですが、ここからいつもは照ノが一度ないし数度右からおっつけて前へ圧力をかけ、その反動で稀勢が強引に出るところを続けざまに振って倒すというのが勝ちパターンであるところ、この日は稀勢の左返しが良かったこともありますが、攻めのないままわずかに右上手を探るような仕草を見せたのみ。そこを稀勢が休まず攻め立て、下がる一方になってしまっては・・・というのが勝敗を分けた最大のポイントだったのかなと見ます。
怪我に関しては、巡業中に痛めた左が悪いんだろうという想像は3日目後にも触れた通りで、場所の取組内容から察するところがありましたから、最初はてっきりそちらを痛めたのだと思っていたので、「なんとか体重を逃がすようにして倒れた分大怪我はないか・・・」と観ていたら、怪我をしたのは俵に引っかかるようになった右足でした。小手にせよ、上手投げにせよ、主に左からの投げを繰り出す照にとっては踏ん張るのに使う方の足ですから、これは大変なことになったぞ・・・と。
あの北尾戦の小錦にしてもそうですが、並外れた下半身の強さとバネを持つ照だからこそ一人で土俵を下り、車いすにも頼らず・・・でしたが、実際に出された診断書と照らしあわせても、やはり翌日以降の出場は無謀であったと言わざるをえない。彼の洋々たる前途を望むからこそ、今回の強行出場を「勇気ある」などと評してはならないと思っていますし、今場所後の調整も、大関という地位にある特権も考慮しながら、怪我の回復を何より再優先に取り組んでもらいたいと強く願っています。より詳しくはまた総括記事で。
14日目
●10-4稀勢の里(寄り倒し)鶴竜12-2○
論点としては数えきれないほどあるのですが、取組内容自体は、凡戦と言わざるをえないところで、きわめてノーコメントに近い心境です。
一級の勝負師なら二度目の変化は読んで、手を出しにいくなりしてほしかったが、稀勢の里がそういう力士かといえば・・・ですし、組み止めた後の流れもじっくり行くべきだったというのは簡単なのですが、まあ結局は終始鶴竜がペースを握っていたというしかないのかな。
立合い変化の是非については、今ここで私見を書くことはしませんが、楽しみにこの一番を見守った観客やテレビ桟敷の立場として、せめても「残念」と言えるくらいの権利は保証されるべきでしょう。
千穐楽
○12-3照ノ富士(寄り切り)鶴竜12-3●
一時期そればかり書いていましたが、久々に照ノ富士の良い突き放しを見て、肘のことはあるだろうけど、是非これを主な取り口の一つに取り入れて欲しいなと再実感しましたし、膝の不安とも戦っていかなければならない来場所以降、終始前へ攻めるという型を身に着けるにおいて、当然模索していかなければならない手段であるとも思う。
ともあれ、照が放つ「攻めるしかない」の気迫に気圧されたか、鶴竜は立ち合いで上体が起き、終始受け身。何も出来ないままに土俵を割り、舞台は優勝決定戦へと移った。
決定戦
○鶴竜(上手出し投げ)照ノ富士●
東西入れ替わっての決定戦は気を引き締め直した鶴竜の真骨頂。鋭い踏み込みから素早く両前廻しを浅く取り、引きつけておきながら、照が出るところ、遠心力を使うように体を左に回し、定石通り下へと打ちつける出し投げを放てば、手負いの照ノ富士に残す余力はなく、鶴竜に横綱昇進後初、通算2度目の天皇賜杯が齎された。
本割を見た後、照ノ富士が立ち合いで飛べば鶴竜は落ちるんじゃないかという予感がしていましたし、照ノ富士が決定戦に勝てるとすれば、それしかなかったのかとも思いますが、やりませんでした。
鶴竜には、稀勢の里戦の変化よりも、決定戦の土俵でそういうこと(相手の変化)が頭をよぎったのかということを聞いてみたかった。
もし実現していたとすれば、やや形は違うものの、19年3月の再現となっていたわけですが、あの件が今も長く批判の対象になっているかと言うと、好角家の間ではともかく、一般にはそういうものになり得ていないのは明らかで、つまるところ、今場所のこともあまり大げさに考えすぎる必要はないのだと思う。
・・・ということで、以上、今場所の熱中録でした。今後は明日予想番付を公開し、以降はしばしの充電期間。来月半ばから場所総括→幕下ランキング→有望力士特集→取組別展望という恒例の更新に取り掛かってまいります。