貴源治賢 出身:茨城 生年:平成9年 所属:貴乃花 身長:187センチ 体重:141キロ
<プロフィール>
もう1年以上に前になりますが、貴公俊編で触れた内容がほぼ貴源治にも相当する感じなので、そちらをご参照下さい。
肝腎なのは、今年に入って一挙に幕下定着、あるいはそこを飛び越えての上位進出を果たしつつあるということ。
その要因などについて、以下で分析してみます。
<取り口>
昨年あたり、幕下と三段目を往復していた時期には、まだまだ取り口が固まり切っていないように見受けられたのですが、今年の上半期くらいから、師匠からのアドバイスで立合いもろ手で当たってからの突きに徹するようになり、「大相撲の力士」として、一本芯の通ったものが宿り始めたという印象。
突っ張りの型は場所を経るごとに良くなっており、具体的には立合いでの上体の力みもよく抜けており、突っ張りに行く際の手数・精度・重み、引き手の速さも良し。引き手の速さという点については、場所前出稽古に赴いた錣山部屋にて錣山親方から指導されたようですが(BS放送中のレポート参照)、「難しい」と言いながら、場所に入れば難なくやってのけているあたり、吸収力の高さも抜群で、勿論それだけの稽古量が担保されているからこそでもあるはず。
元々この力士は四つに組んだ際にはどちらに組んでも、差し手を生かしつつ上手の側から攻めるという体にあった相撲を取れる点が大きな長所で、隆々たる上体の筋力とバスケで仕込んだ足腰の強靭さを兼ね備えるバランスのとれた体格を利し、両廻しを引きつけ、胸を合わせて下から上へとしゃくりあげるような寄り身の鋭さは魅力たっぷり。
近時の流行に倣えば、四つの体勢を早くに作るため、立合いで前廻しを狙うような「白鵬型」の取り口を目指すのが普通でしょう(実際、そういう立ち方をしていた時期も昨年以前は度々見られました)。
しかし、貴乃花親方はこれを採らず、「突き押しに徹するべし」とした。この指導が卓見であると感じるのは、 確か根拠として骨格が云々ということを挙げていたと思うんですよね。つまり、体つきを見て、「最初から廻しを取らせるのではなく、突っ張らせた方が良い」ということを的確に見抜く能力。これに関しては流石としかいいようがありません。
いずれ単独テーマとして取り上げたいなと思っていますが、前廻しから取りに行く立合いというのは、そのスタイリッシュさもあってか、最近幕下以下でも数多くの力士が取り組んでいますが、技術的にも体力的にもしっかりと踏み込みながらの前廻しという型は本当に難しく、安易に真似をしたとしても腰高脇甘を助長するばかりで易々とできるものでないですし、貴源治くらい身長が高くて足も長い力士にとってはなおさらのこと(だから、妙な言い方ですが、長身ながらも胴長の体型と言われる白鵬の足が後少し長ければ、この10年の大相撲はそれなりに違うものになっていた可能性も否定はできないわけです)。
その点、突きに徹さしめ、突き切るための稽古に集中させれば、勿論そのまま突き出す、押し出す相撲が取れればベストだし、仮に突ききれずに組む形になったとしても、小手先ではない、しっかりと体重の乗った突きを身につけることにより、相手のバランスを崩し、先に自分有利の体勢に組む確率が高くなり、上記したような四つに組んだ際の長所もより生かされやすくなります。
最高位の20枚目で6勝をあげた去る9月場所でも、飛翔富士、芝という大型ないしは腰の重い四つ相撲の実力者を相手に、まずはしっかりと踏み込み勝ち、出足をつけてからの四つに渡り合うや、先手先手で両廻しを引きつけての速攻を繰り出し、何もさせずに寄り切る会心の内容がありました。
師匠の的確な指導もありますが、何よりそれを素直に聞いて、恵まれた体格をもっとも合理的に生かす正攻法の取り口に進境を見出した本人の努力の賜物ですし、前述した吸収力の高さという面も含め、相撲経験なしから入門して、5年足らずの間にかほどの素養を身につけたという事実には、ただただ舌を巻くばかりですね。
<今後に向けて>
現状においては、何も指摘することはありません。心技体すべてにおいて特級の資質を有することに疑いはなく、過去に幕下以下の記事で書いた記憶は全然ないのですが、この人に関してはハッキリ大関以上を目指すことのできる超逸材であるということを断じてしまっても構わないでしょう。
この一年でまた一回りも二回りも強くなり、いよいよ九州では初の一桁枚数へと躍進。十両の舞台に手が届く時機もそう遠い先の話ではないだろうなと予測しています。
<プロフィール>
もう1年以上に前になりますが、貴公俊編で触れた内容がほぼ貴源治にも相当する感じなので、そちらをご参照下さい。
肝腎なのは、今年に入って一挙に幕下定着、あるいはそこを飛び越えての上位進出を果たしつつあるということ。
その要因などについて、以下で分析してみます。
<取り口>
昨年あたり、幕下と三段目を往復していた時期には、まだまだ取り口が固まり切っていないように見受けられたのですが、今年の上半期くらいから、師匠からのアドバイスで立合いもろ手で当たってからの突きに徹するようになり、「大相撲の力士」として、一本芯の通ったものが宿り始めたという印象。
突っ張りの型は場所を経るごとに良くなっており、具体的には立合いでの上体の力みもよく抜けており、突っ張りに行く際の手数・精度・重み、引き手の速さも良し。引き手の速さという点については、場所前出稽古に赴いた錣山部屋にて錣山親方から指導されたようですが(BS放送中のレポート参照)、「難しい」と言いながら、場所に入れば難なくやってのけているあたり、吸収力の高さも抜群で、勿論それだけの稽古量が担保されているからこそでもあるはず。
元々この力士は四つに組んだ際にはどちらに組んでも、差し手を生かしつつ上手の側から攻めるという体にあった相撲を取れる点が大きな長所で、隆々たる上体の筋力とバスケで仕込んだ足腰の強靭さを兼ね備えるバランスのとれた体格を利し、両廻しを引きつけ、胸を合わせて下から上へとしゃくりあげるような寄り身の鋭さは魅力たっぷり。
近時の流行に倣えば、四つの体勢を早くに作るため、立合いで前廻しを狙うような「白鵬型」の取り口を目指すのが普通でしょう(実際、そういう立ち方をしていた時期も昨年以前は度々見られました)。
しかし、貴乃花親方はこれを採らず、「突き押しに徹するべし」とした。この指導が卓見であると感じるのは、 確か根拠として骨格が云々ということを挙げていたと思うんですよね。つまり、体つきを見て、「最初から廻しを取らせるのではなく、突っ張らせた方が良い」ということを的確に見抜く能力。これに関しては流石としかいいようがありません。
いずれ単独テーマとして取り上げたいなと思っていますが、前廻しから取りに行く立合いというのは、そのスタイリッシュさもあってか、最近幕下以下でも数多くの力士が取り組んでいますが、技術的にも体力的にもしっかりと踏み込みながらの前廻しという型は本当に難しく、安易に真似をしたとしても腰高脇甘を助長するばかりで易々とできるものでないですし、貴源治くらい身長が高くて足も長い力士にとってはなおさらのこと(だから、妙な言い方ですが、長身ながらも胴長の体型と言われる白鵬の足が後少し長ければ、この10年の大相撲はそれなりに違うものになっていた可能性も否定はできないわけです)。
その点、突きに徹さしめ、突き切るための稽古に集中させれば、勿論そのまま突き出す、押し出す相撲が取れればベストだし、仮に突ききれずに組む形になったとしても、小手先ではない、しっかりと体重の乗った突きを身につけることにより、相手のバランスを崩し、先に自分有利の体勢に組む確率が高くなり、上記したような四つに組んだ際の長所もより生かされやすくなります。
最高位の20枚目で6勝をあげた去る9月場所でも、飛翔富士、芝という大型ないしは腰の重い四つ相撲の実力者を相手に、まずはしっかりと踏み込み勝ち、出足をつけてからの四つに渡り合うや、先手先手で両廻しを引きつけての速攻を繰り出し、何もさせずに寄り切る会心の内容がありました。
師匠の的確な指導もありますが、何よりそれを素直に聞いて、恵まれた体格をもっとも合理的に生かす正攻法の取り口に進境を見出した本人の努力の賜物ですし、前述した吸収力の高さという面も含め、相撲経験なしから入門して、5年足らずの間にかほどの素養を身につけたという事実には、ただただ舌を巻くばかりですね。
<今後に向けて>
現状においては、何も指摘することはありません。心技体すべてにおいて特級の資質を有することに疑いはなく、過去に幕下以下の記事で書いた記憶は全然ないのですが、この人に関してはハッキリ大関以上を目指すことのできる超逸材であるということを断じてしまっても構わないでしょう。
この一年でまた一回りも二回りも強くなり、いよいよ九州では初の一桁枚数へと躍進。十両の舞台に手が届く時機もそう遠い先の話ではないだろうなと予測しています。