今場所も優勝決定まで毎日更新と行きますか。ひとまず10日目後の幕内力士分は優勝争いに関わる2人のみとして、徐々に書き足していきます。
栃ノ心 9-1→10-1→11-1→12-1→13-1 優勝!
あくまで私見ですが、右の使い方なんですよね、やっぱり。右が使えてるから左(の引きつけ)も早いし、右が使えてるから胸を合わせるのも早いし、右が使えてるから土俵際も怖くない。自信なさげに左へずれて上手を探るような相撲はまるっきり消え失せました。
自分が低くなるということに限度のある人だから、いかに素早く相手を起こすかが「もう一つ上」を目指すにあたっての要領であるところ、今場所の栃ノ心には本当に何も言うことがありません。今日の琴奨菊戦も杞憂の圧勝、相手の面倒な左を自然に右を使って造作もなく片付けてしまいました。
さて、ここまで来たからには1差の鶴竜にどこまで食らいつけるか。明日の宝富士も初日・2日目と合口の良い相手に連敗したのが今になって惜しく感じられるほど調子を上げているだけに、面白い取組になるでしょう。栃ノ心の右が宝富士の左を突破できるか。宝は恐らくかましてきますから、かち上げて起こすのも一計か。
・10日目終了後
立合いは、やはりかましてくる宝富士に対してかち上げからの突き起こし。先手を取って東へ攻め寄せ、宝富士が向こう正面伝いに回るのを落ち着いて追い込みながら、右で絞って右を差し勝つ…のですが、宝も本当に元気、左の力を抜いて右から攻め返しつつ、先に左上手、左へ回りながら右腰を引いて栃ノ心の左上手を許さないよう実に上手く動いたのち、上手で捻りながら体を離してしまったので、ここで栃ノ心が冷静さを欠き、攻めが上ずりました。宝富士難なく受け止め、右を覗かせ左を固めるようにして煽り、次いで左から撥くと栃ノ心大きく泳いで東へ下がる。それでも両足を俵にかけながら左で顔、右で肘を押し上げて宝の出足を遅らせ、最後は左で首を押さえての突き落とし。宝富士は右足を送りきれず、渡し込み実らずに、栃ノ心の体が飛ぶより僅かに早く右肘が落ちました。
栃ノ心としては薄氷の勝利ですが、何より期待通りの熱戦・好戦となりました。宝富士の奮戦にも拍手を贈りたい。
明日は鶴竜を破って勢いに乗る玉鷲戦。実は合口が良く、目下6連勝中。昨年夏は立合いが合わず2度目に右へ変わっての注文勝ち。名古屋は激しい突き合いに。玉鷲に右おっつけから正面に攻め寄せられるも、右の突きが外れたところで横についての勝ち、秋は肩透かしで下すも、両者とも手負いの状態ゆえあまり参考にはならないか。
当たり鋭く、左のおっつけも強い相手、簡単に組み止めさせては貰えないでしょうから、 予想しやすいのは名古屋のような突っ張り合いか。受けることなく、今場所の体調・反応の良さを信じ、自分から積極的に突いて突いて攻めんとする姿勢が肝腎です。
・12日目終了後
2度立合い合わず3度目、右差しの立合いは玉鷲に対応され、右喉輪左おっつけの得意型に持ち込まれるのですが、これでも全然腰が崩れないのだから驚くよりほかありません。右の力を抜き左から攻めることで正対しながら突きを外すと、突き返さんと正面に出るところをいなされても泳いだように見えて下半身が乱れずに立て直し、少し見るような動きになった玉鷲が手先でもろ手突きに出るところ、素早く右を覗かせるやすぐに足を運び、前に出ながら左も差し込んでの攻めで白房方向へと寄り切りました。体の寄せが早く、腰も下りている(相手の腰を十分に伸ばしている)ので、玉鷲が得意とする土俵際の突き落としを打つ隙もありませんでしたね。
しかし、明日は文字通り大きな大きな壁が立ちはだかります。
逸ノ城はよく知られている通り、右を使わせると力の出る人、つまり右四つ時は右下手が命綱となるのだから、栃ノ心は自身のもっとも力が出る左上手を取りやすくはあるわけです。ただ、栃ノ心は左で相手の差し手を殺すような技術には不足があり、逸ノ城の右を生かしてしまうために、毎回この勝負は長引いてしまう(攻めあぐねるごと余計に相手は重くなりますからね)。頭をつけんとする動きも見られるのですが、上手を全部取った状態でそれをしようとするので難しく、廻しを切る・巻き替えといった特技にも決め手を欠く。
明日も右四つで時間がかかってしまう公算は大きいので、そうなったときはもう、一瞬の勝機(相手の腰が僅かに浮いた場面など)を逸することなく攻めぬけるか。そのための駆け引き・仕掛けに見どころが凝縮されます。
別の展開としては、序盤の突き起こしで先手を取ることですが、何しろ重いので簡単ではありません。顔のあたりを攻めたときに嫌がって引いてくれるだとか横を向いてくれるだとか、そういった傾向もないことはないので、何かしら狙いをもってやるのであればハマるかもしれませんが…
また逸ノ城は左からの攻めも良くなっているので、安易に右を差しに行くと挟み付けられる危険があり、それを避けるためにまずは突っ張ってから次の展開を探るという意味もあるのかなとは思いますね。
・13日目終了後
逸ノ城の上手が切れましたねえ。すなわち取り直す一瞬に隙が生じる。そして、そのタイミングでの栃ノ心の仕掛けがあまりにも素早く、体の寄せも良かったので、逸ノ城は守りの体勢を整える前に攻め抜かれてしまった。予想以上に早い決着ではありましたが、展望に書いたような勝機を逃さぬ栃ノ心の厳しい攻めが勝ちに繋がったことは間違いなさそうです。
それにしても、吊って出ましたからね。技術面の進歩をアレコレ書いている立場としても、ただただ唖然としてしまいました。なんちゅう怪力や…と。
さて、いよいよ明日優勝がかかる一番。相手の松鳳山とは幕内で通算9勝3敗と優勢ですが、直近2回は黒星。お互いに突っ張り合う展開から松鳳山は中に入ろうとし、栃ノ心はその近づいてくるタイミングで左上手を引いて捕まえたいという狙いで推移しています。
ただ、松鳳山も振る力がありますから、深い上手(だけ)で強引に攻め立てるのは安定性に欠ける。理想としては突きで相手の上体を起こし、自分から相手に近づく形で上手を引いてはやく胸を合わせたいですね。
松鳳山もこういう場面で燃える漢ですから、ものすごい闘争心で向かっていくでしょう。栃ノ心としては硬くならないわけもないですが、いかに相手ペースに乗せられず受けて立つことなく、立合いに集中できるか。固唾を呑んでその瞬間を見守りたいと思っています。
・14日目終了(優勝決定)後
松鳳山は、最近の低く立って左を固めるような立合いではなく、もろ手突き。
意表を突かれたかに見えた栃ノ心ですが、受けに回ることなく、よく対応して突き返し青房方向へ、ここでいつものように松鳳山は中へ入らん、栃ノ心は左上手に手を伸ばして引っ張り込まんとする動きを見せるのですが、松鳳山が左をねじ込もうとしながら右ハズで栃ノ心の左を嫌わんとすると、栃ノ心は思い直してすぐに左を離し、右からおっつけて振りほどき、再度突き放しに出ます。
突き返す松鳳山、栃ノ心やや手先の突っ張りになったところをいなされ泳ぎますが、向き直りが早い。松鳳山は栃ノ心の後ろミツを探るようにして付け入らんとしますが、予想以上に相手の反応が早くて横につけず(本人はこの場面を大いに悔んでいました)、栃ノ心の左腕にくっつくような具合になったので、栃すぐさま左を差し、右で引っ張り込んで相手得意の左四つにも構わず、右おっつけで前へ。松鳳山が左を上げ、左に重心を寄せて堪らえようとすると落ち着いて一度腰を据え、松鳳山が右を巻き替えるところ、左を返して許さず、腰を落としながら右からおっつける渾身の寄りで勝負を決めました。
師匠のアドバイス通り、また前日分の展望でも触れたように「突っ張ってから捕まえる」という理想を体現、今場所終始光る反応の良さ・勘の鋭さも十分に発揮し、松鳳山の果敢な攻めを寄せ付けることなく退けた会心の一番。記念すべき初優勝を飾るにふさわしい好勝負と言えるでしょう。
最高のお膳立てのもと実現した同期生対決を白熱の攻防にて彩った両力士に拍手、そして改めて栃ノ心関の初優勝を心から祝福します。
優勝が決まったので明日の一番の展望は行いません。ただ、栃ノ心としては合口の悪い遠藤、来場所以降を見据えても苦手意識を払拭できるに越したことはないですから、有終の美を飾る勝利を収められるか見どころは十分。前さばきの攻防になると手を焼くので、やはり突き離して先手を取ることが肝腎でしょうね。
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栃ノ心 9-1→10-1→11-1→12-1→13-1 優勝!
あくまで私見ですが、右の使い方なんですよね、やっぱり。右が使えてるから左(の引きつけ)も早いし、右が使えてるから胸を合わせるのも早いし、右が使えてるから土俵際も怖くない。自信なさげに左へずれて上手を探るような相撲はまるっきり消え失せました。
自分が低くなるということに限度のある人だから、いかに素早く相手を起こすかが「もう一つ上」を目指すにあたっての要領であるところ、今場所の栃ノ心には本当に何も言うことがありません。今日の琴奨菊戦も杞憂の圧勝、相手の面倒な左を自然に右を使って造作もなく片付けてしまいました。
さて、ここまで来たからには1差の鶴竜にどこまで食らいつけるか。明日の宝富士も初日・2日目と合口の良い相手に連敗したのが今になって惜しく感じられるほど調子を上げているだけに、面白い取組になるでしょう。栃ノ心の右が宝富士の左を突破できるか。宝は恐らくかましてきますから、かち上げて起こすのも一計か。
・10日目終了後
立合いは、やはりかましてくる宝富士に対してかち上げからの突き起こし。先手を取って東へ攻め寄せ、宝富士が向こう正面伝いに回るのを落ち着いて追い込みながら、右で絞って右を差し勝つ…のですが、宝も本当に元気、左の力を抜いて右から攻め返しつつ、先に左上手、左へ回りながら右腰を引いて栃ノ心の左上手を許さないよう実に上手く動いたのち、上手で捻りながら体を離してしまったので、ここで栃ノ心が冷静さを欠き、攻めが上ずりました。宝富士難なく受け止め、右を覗かせ左を固めるようにして煽り、次いで左から撥くと栃ノ心大きく泳いで東へ下がる。それでも両足を俵にかけながら左で顔、右で肘を押し上げて宝の出足を遅らせ、最後は左で首を押さえての突き落とし。宝富士は右足を送りきれず、渡し込み実らずに、栃ノ心の体が飛ぶより僅かに早く右肘が落ちました。
栃ノ心としては薄氷の勝利ですが、何より期待通りの熱戦・好戦となりました。宝富士の奮戦にも拍手を贈りたい。
明日は鶴竜を破って勢いに乗る玉鷲戦。実は合口が良く、目下6連勝中。昨年夏は立合いが合わず2度目に右へ変わっての注文勝ち。名古屋は激しい突き合いに。玉鷲に右おっつけから正面に攻め寄せられるも、右の突きが外れたところで横についての勝ち、秋は肩透かしで下すも、両者とも手負いの状態ゆえあまり参考にはならないか。
当たり鋭く、左のおっつけも強い相手、簡単に組み止めさせては貰えないでしょうから、 予想しやすいのは名古屋のような突っ張り合いか。受けることなく、今場所の体調・反応の良さを信じ、自分から積極的に突いて突いて攻めんとする姿勢が肝腎です。
・12日目終了後
2度立合い合わず3度目、右差しの立合いは玉鷲に対応され、右喉輪左おっつけの得意型に持ち込まれるのですが、これでも全然腰が崩れないのだから驚くよりほかありません。右の力を抜き左から攻めることで正対しながら突きを外すと、突き返さんと正面に出るところをいなされても泳いだように見えて下半身が乱れずに立て直し、少し見るような動きになった玉鷲が手先でもろ手突きに出るところ、素早く右を覗かせるやすぐに足を運び、前に出ながら左も差し込んでの攻めで白房方向へと寄り切りました。体の寄せが早く、腰も下りている(相手の腰を十分に伸ばしている)ので、玉鷲が得意とする土俵際の突き落としを打つ隙もありませんでしたね。
しかし、明日は文字通り大きな大きな壁が立ちはだかります。
逸ノ城はよく知られている通り、右を使わせると力の出る人、つまり右四つ時は右下手が命綱となるのだから、栃ノ心は自身のもっとも力が出る左上手を取りやすくはあるわけです。ただ、栃ノ心は左で相手の差し手を殺すような技術には不足があり、逸ノ城の右を生かしてしまうために、毎回この勝負は長引いてしまう(攻めあぐねるごと余計に相手は重くなりますからね)。頭をつけんとする動きも見られるのですが、上手を全部取った状態でそれをしようとするので難しく、廻しを切る・巻き替えといった特技にも決め手を欠く。
明日も右四つで時間がかかってしまう公算は大きいので、そうなったときはもう、一瞬の勝機(相手の腰が僅かに浮いた場面など)を逸することなく攻めぬけるか。そのための駆け引き・仕掛けに見どころが凝縮されます。
別の展開としては、序盤の突き起こしで先手を取ることですが、何しろ重いので簡単ではありません。顔のあたりを攻めたときに嫌がって引いてくれるだとか横を向いてくれるだとか、そういった傾向もないことはないので、何かしら狙いをもってやるのであればハマるかもしれませんが…
また逸ノ城は左からの攻めも良くなっているので、安易に右を差しに行くと挟み付けられる危険があり、それを避けるためにまずは突っ張ってから次の展開を探るという意味もあるのかなとは思いますね。
・13日目終了後
逸ノ城の上手が切れましたねえ。すなわち取り直す一瞬に隙が生じる。そして、そのタイミングでの栃ノ心の仕掛けがあまりにも素早く、体の寄せも良かったので、逸ノ城は守りの体勢を整える前に攻め抜かれてしまった。予想以上に早い決着ではありましたが、展望に書いたような勝機を逃さぬ栃ノ心の厳しい攻めが勝ちに繋がったことは間違いなさそうです。
それにしても、吊って出ましたからね。技術面の進歩をアレコレ書いている立場としても、ただただ唖然としてしまいました。なんちゅう怪力や…と。
さて、いよいよ明日優勝がかかる一番。相手の松鳳山とは幕内で通算9勝3敗と優勢ですが、直近2回は黒星。お互いに突っ張り合う展開から松鳳山は中に入ろうとし、栃ノ心はその近づいてくるタイミングで左上手を引いて捕まえたいという狙いで推移しています。
ただ、松鳳山も振る力がありますから、深い上手(だけ)で強引に攻め立てるのは安定性に欠ける。理想としては突きで相手の上体を起こし、自分から相手に近づく形で上手を引いてはやく胸を合わせたいですね。
松鳳山もこういう場面で燃える漢ですから、ものすごい闘争心で向かっていくでしょう。栃ノ心としては硬くならないわけもないですが、いかに相手ペースに乗せられず受けて立つことなく、立合いに集中できるか。固唾を呑んでその瞬間を見守りたいと思っています。
・14日目終了(優勝決定)後
松鳳山は、最近の低く立って左を固めるような立合いではなく、もろ手突き。
意表を突かれたかに見えた栃ノ心ですが、受けに回ることなく、よく対応して突き返し青房方向へ、ここでいつものように松鳳山は中へ入らん、栃ノ心は左上手に手を伸ばして引っ張り込まんとする動きを見せるのですが、松鳳山が左をねじ込もうとしながら右ハズで栃ノ心の左を嫌わんとすると、栃ノ心は思い直してすぐに左を離し、右からおっつけて振りほどき、再度突き放しに出ます。
突き返す松鳳山、栃ノ心やや手先の突っ張りになったところをいなされ泳ぎますが、向き直りが早い。松鳳山は栃ノ心の後ろミツを探るようにして付け入らんとしますが、予想以上に相手の反応が早くて横につけず(本人はこの場面を大いに悔んでいました)、栃ノ心の左腕にくっつくような具合になったので、栃すぐさま左を差し、右で引っ張り込んで相手得意の左四つにも構わず、右おっつけで前へ。松鳳山が左を上げ、左に重心を寄せて堪らえようとすると落ち着いて一度腰を据え、松鳳山が右を巻き替えるところ、左を返して許さず、腰を落としながら右からおっつける渾身の寄りで勝負を決めました。
師匠のアドバイス通り、また前日分の展望でも触れたように「突っ張ってから捕まえる」という理想を体現、今場所終始光る反応の良さ・勘の鋭さも十分に発揮し、松鳳山の果敢な攻めを寄せ付けることなく退けた会心の一番。記念すべき初優勝を飾るにふさわしい好勝負と言えるでしょう。
最高のお膳立てのもと実現した同期生対決を白熱の攻防にて彩った両力士に拍手、そして改めて栃ノ心関の初優勝を心から祝福します。
優勝が決まったので明日の一番の展望は行いません。ただ、栃ノ心としては合口の悪い遠藤、来場所以降を見据えても苦手意識を払拭できるに越したことはないですから、有終の美を飾る勝利を収められるか見どころは十分。前さばきの攻防になると手を焼くので、やはり突き離して先手を取ることが肝腎でしょうね。
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