土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

Category:2016年 > 初場所

管理人体調不良により、遅くなってしまい申し訳ありません。時機も逸しましたし、早く次の更新に取り掛かっていかねばならない事情もあるので、敢えてこの一番だけとしましょうか。


幕内
○14-1琴奨菊(突き落とし)豪栄道4-11●
・・・と言っても、やっぱり書けること自体は多くありません。両差し狙いの豪栄道も、今場所の多くに共通して、立合いの鋭さ自体悪くなかったですが、琴奨菊は今場所多く採っていた左で張る立合いではなく、王道とも言える、かまして左をぶつけながら右で抱えるという狙い。
豪栄道の右手首の状況も判断し、また意外に踏み込みの良さ自体は備わっている点を踏まえ、そんなに突っ込み過ぎないように、受け止め加減で当たりながら、左を引っ張りこんで動きを大きく制限するという感じだったでしょうか。
まあ、こういうのも字数を稼ぐための引き伸ばし策で、結果として、前に出ながら相手の右を抜かせて左四つ、右で抱える形勢を整えたという勝因を書けば済む話。後は、日馬富士戦と同じく、そのまま寄り切れるか、さもなければ突き落としないし小手投げに行くタイミングを間違えないという点をクリアするかどうか。見事突き落としで決めて、この瞬間、大関琴奨菊に遅咲きの初優勝が成ったのでした。

場内は決して品のないバンザイなどが飛び交うこともなく、ひとえに熱狂また熱狂。最高潮に達した興奮の渦は、テレビ越しの耳にも地鳴りのように押し寄せる。31歳のベテラン大関に降り注ぐ、かような大喝采は暫くの間止むことを知らず、余韻冷めやらぬままに次の鶴竜×稀勢の里が時間いっぱいとなったような趣でした。




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詳細は書かないので、冒頭に記しますが、この日の十両最初の一番、出羽疾風(十両西14 7-6)×若乃島(幕下西1 3-3)は、まさに関取の椅子を争いにふさわしい激闘でした。出羽疾風の物凄い気迫も絶賛したいですし、若乃島もこういう相撲が取れるなら、じきに戻ります。



幕内
○13-1琴奨菊(寄り切り)栃煌山6-8●
立合い一度合わず二度目。大関は左手を下から出すような感じでかなり強烈に張って栃煌山の顔を起こし、そこに体をぶつけて、右で抱え、左を固めながら突撃。栃煌山が左から巻くようにして、右に動こうとするのですが、このときに右が空いてしまって大関の左がズブリ。絶好の形を作って煽り立てると、もはや栃煌山にせんすべはなし。
書く分量の少ないことが絶好調の証というのは、トップページでも書いたとおりですが、前日に敗れた翌日の苦手相手という難しい局面で、その相撲が取れたわけですから、これはもう絶賛、賞賛の限りを尽くすだけ。この大関の良いところばかりが出たという一番でした。

○8-6稀勢の里(押し出し)白鵬12-2●
白鵬の立合いは、今場所中でも松鳳山戦、宝富士戦でも出している、左四つの相手とまともな差し手争いに行かず、左手を出しながら右に少しずれてのおっつけで右から攻めようとする狙い。
結局は、これが大失敗で惨敗を喫することになるのですが、今場所中の熱中録中でも上記2番を取り上げた上で・・・

「この攻めが出来るということは、足も前後左右へまずまず動かせるということですから、対戦相手はこの点も計算に入れつつ、まずは立合いで意表を突かれないだけの準備に徹してほしい(3日目 松鳳山戦分)

「あまり左四つ相手にこれを乱用すると、よほど差し手争いが嫌なんだな・・・というのを露呈することにもなるわけで、この後、稀勢の里、琴奨菊は勿論ですが、嘉風あたりもいますから、どうなっていくのかな?という思いはあります。逆に言えば、前日分でも触れた通り、相手がその辺りをどう考えるのかですね (4日目宝富士戦分)


という記載をしていました。抜粋の中にもあるとおり、この流れというのは、まず足の動きが効くということに大前提があります。一番の敗因は、3日目の白鵬にはそれがあり、14日目の白鵬には程遠かったという点になるのでしょう。師匠は昨秋休場の原因にもなった左膝の悪化を挙げていますが、筆者も同じ考えですね。肘と言うよりは、膝という見立てでいます。

また、この立合いにおける技術的なポイントは、左四つの相手が右足から踏み込んで、左を固める狙いで立ってきた場合に、それを右から崩して、その後はおっつけのまま右を差すなり、突き放してから組み止めるなり、この横綱らしい相撲勘の良さで次の展開を形成するというもの。
翻って稀勢の里の立合いは、先場所あたりから、右四つ相手に左から踏み込んで、右喉輪左おっつけというパターンがかなり定着してきた。この点を見落としていたとすれば、それは白鵬らしからぬ失態なのですが、つまり順番として左→右と出ますから、白鵬が右にずれようとする動きに対して、スムーズに足を送りやすいんですよね。白鵬からすれば、右に動きたいはずが、先回りで道を塞がれたという感覚でしょうか。
もちろん、上記抜粋にも繋がりますが、稀勢の里がこの立合いを十分に想定し、また、先場所同様に駆け引きの面でも惑わされなくなったために、立合いに相手をよく見ながら、抜群の対応をすることができた。
まあ、ごちゃごちゃ書きましたが、一言で示すなら、白鵬が取組後に述べた「タイミング」「合う合わない」の問題ですね。

白鵬としては、稀勢の里の立ち方や左足の運びに不安がある体調面を考慮すれば、動くにしても以前のように左へ行くのが正解だったのかなと。コンディションが落ちて、余裕がなくなると、相撲勘にも鈍りが出てしまうということなのでしょうけど、総じて言うなら、絶対視すべきでない方法に頼って、いとも容易く逆用されたということ。来場所以降も、この立合いをやるのは、体調とも相談しつつ、あくまでピンポイントに留めるべきです。


立合い以降の流れについては、稀勢の里の左ハズがよく効きましたね。右おっつけとも合わせて挟み付け、白鵬を正面から逃さず、白鵬が左喉輪、右で左を外そうと腕を押し下げるようにするものの、なかなか左が外れずに、慌てて左へ回ろうとしますが、時すでに遅し。脆くも西溜まりへとふっ飛ばされたという内容でした。
あまりにあっけないとも捉えられますが、稀勢の里の詰め方が良かったのと、12、13日目の内容を見ても分かる通り、白鵬の基本的な体調面にかなりの乱れが出ていますからね・・・
スローを見れば、稀勢の里の攻めをかわすために、それなりのことをやっているのは分かりますが、やはり一つ一つの遅さが好調時とは比べるべくもないですよ。


しかし、これだけ明確かつ出す頻度も決して低くない立合いを、「何がしたかったのかわからない」とか「説明がつかない」とか言うのは一体・・・ 少なくとも意図のところについては、今日の日刊やサンスポにも載っていますから、それを読んでみればいいのではないかなと思います。

13日目の幕内取組にあまり内容がないと、幕下以下の記事も書けるようになるから悪くない・・・というのは、まあ相当なブラックジョークですね。ただ、今場所は実際そんな感じになってしまった

幕内
●12-1琴奨菊(とったり)豊ノ島11-2○
大関は、ちょっと仕切り線から離れすぎたみたいなことを敗因として挙げていましたが、確かに昨年前半の対戦と比べれば遠く、先場所と比べてもやや遠いくらいの距離感。それで勢いがつきすぎたようになって、豊ノ島の回り込みからのとったりに足を運ぶことができなかったというシンプルな負け方でした。
ただ、距離が近ければ近い(近いというほど近くないので、表現が難しいですが)で毎回苦戦を強いられている相手ゆえ、墓穴を掘ったという表現にも違和感があります。
いつもは胸で行く豊ノ島がこの対戦では過去なんども頭から行って、その低さも大関を苦しめている要因の一つではあるのですが、結局はこの日も豊ノ島の立ち回りが上手かったということに尽きるのでしょう。
もし、春が大事な場所になるとして、必ず当たる相手ですから、場所前に機会があれば必ず捕まえて、攻略法を練っておかねばならないのかなと思います。

●9-4鶴竜(寄り切り)白鵬12-1○
張り差しで右を入れようとした白鵬は、鶴竜が構わず右を入れ左から攻めようとするのを、下がりながら左で抱え、右を深くして半身、西土俵に足をかけてからやや正対して上手を探り、鶴竜が腰を引くや下手から振って、白房を回り、次いで体を東に入れ直して鶴竜の出足を誘い、ここで上手。再度東で大きく下手から振り、正面に戻ると、先に先に動いて上手から出し投げ、膝を押さえながら揺さぶって後ろ向きにしたことで勝敗は決した。最後は送り出して1敗を堅持。
しかし、妙なスピード感があるばかりで、横綱対決の重みには大いに欠ける一番でした。 白鵬の終盤は、もうこんな感じが続くと認めざるをえないのかなあ・・・


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