土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

Category:力士別分析 た行 > 高安

髙安晃 出身:茨城 生年:平成2年 所属:田子ノ浦 身長:187センチ 体重:176キロ 
平成29年版はこちら

<立合い分析>
大関昇進の原動力となった体当たりの立合いを現在も主武器としているが、最近は慢性的な腰痛など度重なる怪我に泣き、場所毎・日毎に体調が異なるため、以前のように複数の立合いを使い分けることで乗り切らんとすることのほうが多い。
但し、これといって各立ち合い自体の精度が上昇しているわけではなく、選択ミスが敗戦に直結するケースもしばしば。間もなく30歳を迎え、体力的にも翳りが見える中、立ち合いの方向性をいかに定めていくべきか、一つの岐路に立たされている。


踏み込み足:左差し・張り差し・もろ手突きなどを採用する場合は右足から、体当たり気味に胸から当たる場合は左足をしっかり目に一歩踏み込む
手つき:相手に先に手をつかせてからサッと両手を下ろす。
呼吸:時間いっぱいの仕切りで立ち上がり、一度徳俵の近くまで下がってから、前進→足を決め→腰を割る諸動作をゆっくりゆっくりと行っていくテンポは冗長。相手に先に腰を割らせたいタイプでもあり、互いに譲らない場合は駆け引き合戦となって、さらなるタイムロスが生じることも。


☆立合い技一覧


①体当たり
両腕を固めるようにして胸からガツンと当たり、相手の腰を崩してから、突き放しや左四つといった自分得意の型へと進展させていく。
好調場所においては依然高い威力を放つものの、腰の不調が慢性化している状況下、当たりが弱かったり高すぎたりして跳ね返されたり、そこまでではなくても、相手を起こしきれず力の向きが上から下に向いてしまうことで苦戦に追い込まれる場面も目立っている。

②左差し狙い
肩で当たり左を差しに行く場合と、かましながら差しに行く場合とがある。同じ相手に両方を用いる場合も多く、使い分けの基準は今ひとつ分からない。右をしっかり目に踏み込んで右上手を取りに行くような構えを採る場合もなくはないが、基本的には左を差したいという狙いが強い。

③張り差し
右で張っての左差し狙いが大半。右手の振り抜きは大きめ、左を差してからの体の寄せや腕の返しも甘く、決して上手いとは言いがたい。

④ぶちかまし
右でしっかり踏み込みを入れつつ、ガツンとかまして二の矢で突っ張りや喉輪押しの体勢へと持ち込んで先手を取る。カチッとハマれば高い威力を発揮するが、体型的な面での窮屈さは否めず、頭だけが下がるような形になってしまうと、揺さぶりへの脆さを晒すことも。

⑤モロ手突き
⑥右かち上げ
ともに相手の上体を起こしたい場合のオプション。⑥は左前廻し狙いの相手に用いる。



<攻防分析>
体当たりから進展させての突き放しと左四つからの寄り身という重厚感漂う取り口が基本も、持ち技自体は豊富。四つ身に渡り合えば、左右どちらかでも打てる豪快な上手投げに、合せ技系統の捻り・出し投げも備え、兄弟子の稀勢の里同様、廻しを切る技術(上手・下手とも)もある。
反面、立合い③でも記した左差しの甘さや半端の体勢のまま攻め込んで逆転を喰らいやすい詰め、半身になりやすい癖など長らく解消しきれていない課題も。。
離れて取る場合の展開についても、出足が利いたときの破壊力と、腰高(および不安定)や脇の甘さを突かれるときの脆さが隣り合わせる状況に変化はない。


☆得意技一覧

①左四つ寄り
稀勢の里同様、先に左を差し、前に出ながら右上手という型が基本。大関陥落を招く要因の一つとなった元年名古屋(vs玉鷲)での左肘負傷が顕す通り、体の寄せが遅く差し手の返しも甘いので、棒差しのところを振られたり、相手の右おっつけに絞られて、もたついたりすることも。

②右四つ寄り
最初から右を差しに行くことは少ないが、相手の右に自身の左を攻められた際、自身も右から攻め返して右を割り込み、大きく返しながら左上手を引く体勢を築けば、大抵の相手は動けなくなってしまうだけの重みがある。左の差し手より右の方が返りは早く、胸を合わせる格好を作りやすいのは利点と言えるだろう。寄り身の安定感に関しては左四つ時よりも劣るため、投げ技とのコンビネーションを生かしたい。

③上手投げ
左右どちらかでも出せるのが特徴。やや上から深い位置の上手を取ることが多い分、(リスクもあるが)豪快な投げも決まりやすい。

④出し投げ・捻り
力と技とタイミングと。大型力士ながら、駆け出し期からこうした決まり手を自在に繰り出す相撲勘の良さを持ち合わせていた。上手・下手どちらからの技もあり、無論そのときの体勢によっては出し投げと捻りの合作的な決まり方になることも。
近い時期では、元年名古屋・朝乃山戦で決めた下手出し投げの切れ味など実に見事だった。

⑤突き放し・突っ張り
喉輪押しを交えた突き放しと、張り手を交えた上突っ張りの併用。いずれも型通りに充てがわれてしまうと圧力が削がれ、脆さを露呈する。上突っ張りは、かつての日馬富士戦みたく食いつかれないため間合いを取る際にも用いる。

⑥叩き込み・引き落とし
体当たりの立合いが猛威を奮っていた時期、コンビネーション技として面白いように決まっていたが、癖になるあまり、まったく相手の体形が乱れていない場合に乱用してしまうこともあった。
頭や首ではなく、喉元を突いてからさっと引くパターンも目立ち、この場合は引き落とし。どちらも最近は頻度が減っている。

⑦突き落とし
稀勢の里ゆずりのアレ。あえてそれ以上の説明はしない。

高安晃 出身:茨城 生年:平成2年 所属:田子ノ浦 身長:186センチ 体重:171キロ タイプ:左四つ左腰型?

<立合い分析>
以前は複数のパターンを織り交ぜるタイプだったが、大関が間近に迫ってきた感のある28年下半期以降(とりわけ29年に入って以降)は、体当たり気味に胸から当たる立合いの割合がかなり多くなってきた。
この立合い自体に全然問題がないとは言い切れないものの、器用にアレコレやろうとしすぎるあまり、却ってそれぞれが十分整備されていないような印象も強かっただけに、一つの軸が完成しつつあること自体はプラスに捉えても良いのだろう。
もっとも、いくつか要因が考えられる中で、29年春の終盤戦は体当たりの立合いが出なくなってしまった。夏場所での大関取りに向けては、立合いの出来が最大の鍵を握る。


踏み込み足:左差し狙いや張り差し、もろ手突きなどを採用する場合は右足を小さめに、体当たり気味に胸から当たる場合は左足をしっかり目に一歩踏み込む
手つき:相手によって変えており、ざっくり書くと、先に両手を下ろすような相手には後から腰を割ってサッと両手を下ろすし、立合いの遅い相手には先に仕切って相手を待つことが多い(手つきは右→左の順)。
呼吸:上記の通り、広い意味では相手に合わせているのだけど、個別の勝負においては相手との呼吸自体を合一させているわけではないということに。この点においては、兄弟子の稀勢の里と同じである。

☆立合い技一覧

①体当たり
ここ数場所で髙安という力士の土台を成す型へと育ちつつある。両腕を固めるようにして胸からガツンと当たり、相手の腰を崩さんとする。二の矢での突き放しに進展しやすいのも長所と言えるだろう。 29年1月の白鵬戦、同3月の照ノ富士戦などが象徴するように、胸や肩のあたりから当たって来る相手には吹っ飛ばすという表現が大げさにならないほど猛烈な威力を発揮する一方、どうしても腰が立ちやすい分、ぶちかましを利かせた出足相撲相手には分が悪いため、いずれは当たり方を調整するなり、他の立合いを併用するなりしながら的を絞らせないようにする工夫も求められそうだ。

ちなみに、29年3月に豪風や貴ノ岩が左(髙安にとっての右)に変化をつけて幻惑しようとする立合いを見せたが、あるいは髙安が「踏み込み足」のところで記したような両足併用型の立合いを採り、①体当たりのとき特有の傾向として左足から出るようにしているため、出足の反対側に揺さぶれば崩れやすいのではないかと考えたのかもしれない。今回は好調ということもあり、反応の良さで仕留めたとはいえ、不調時ならバタッと行ってしまうかもしれず、そうでなくとも次回以降の踏み込み度合いに影響を残す可能性は高いことが予想される。

②左差し狙い
肩で当たり左を差しに行く場合と、かましながら差しに行く場合とがある。同じ相手に両方を用いる場合も多く、使い分けの基準は今ひとつ分からない。右上手を取りに行くような構えを採る場合もなくはないが、右の踏み込みも浅めで、基本的には左を差したいという狙いが強い。

③張り差し
右で張っての左差し狙いが大半。右手の振り抜きは大きめ、左を差してからの体の寄せや腕の返しも甘く、決して上手いとは言いがたい。

④ぶちかまし
右でしっかり踏み込みを入れつつ、ガツンとかまして二の矢で突っ張りや喉輪押しの体勢へと持ち込んで先手を取る。28年九州での遠藤戦のようにカチッとハマれば高い威力を発揮するが、体型的な面での窮屈さは否めず、頭だけが下がるような体勢になってしまうと、揺さぶりへの脆さを露呈することも。
①の増加とともに採用率が減り、去る29年春は殆どかますような立合いは見せなかった。 

⑤モロ手突き
いかに相手の上体を起こすかという手段の一つであるため、やはり①の増加とともに自ずと採用率は減っている。

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