松鳳山裕也 出身:福岡 生年:昭和59年 所属:二所ノ関 身長:178センチ 体重140キロ 

<立合い分析>
松鳳山といえばもろ手突き…というイメージも強いが、現在はあくまでバリエーションの中の1つ。かましていくのは勿論、左差し・両差し・張り差し・左右にずれながら相手の差し手を封じる狙いなど数多くの立合い技を相手に応じて使い分け、巧みに機先を制する。
立合い正常化の流れにおいてやり玉に挙がった呼吸及び手つきの拙さに関しても、(特に後者については)一応の改善が見られる。


踏み込み足:採る立合いによってさまざまに変えている。書き始めると長くなるが、簡単にまとめれば右足・左足・両足跳びのすべてを用いる。
手つき:両手をさっと下ろして立つのが基本。先に手をついて待つ場合は右→左の順。
チョン立ちをする力士の宿命とも言える手つきの有無に関しても、しっかり両手を着くようになっている。相手が先に両手を下ろして待つタイプの場合などに両手を完全には着かず立っていくこともあるが、これは相手の仕切りにも問題があるため、片方だけを責めきれない面も…勿論、どのような場合でもしっかり両手を着くのが前提であり、改善できるに越したことはない。
呼吸:問題がより多く残るとすれば、やはり呼吸具合の方だろう。多く指摘がなされている通り、腰を割ってから立つまでが非常に長く、自分だけの呼吸でサッと両手を着いて立つため、不成立や中途半端な間合いで立ってしまうケースは依然多い。
それでも以前と比べれば、過度の焦らし戦法とも取れるような仕切りや、3度4度と不成立になるような場面は減っており、筆者は上記の通り、改善基調にあると見ている。



<攻防分析>
最大の持ち味は回転と手数、ときには張り手も交える気迫満点の突っ張り。もっとも最近はすっかり左差し狙いの相撲が多くなったという印象だが、元来必ずしも突っ張り一本槍というタイプではなく、本人が言うには「何でも思い切るやる相撲」「突っ張りはあくまで中に入るための手段」とのこと。
最近、歳相応の円熟味が現れつつあり、中に入る手順・入ってからの攻めに再現性が出てきたのは、同郷・同門の先輩嘉風に通じる。左を差してから、体の割には大きく使いがちであった右も「小さく」「下から」使えるようになったのでもろ差しの機会が増えたのもそうだが、30年初場所の勢戦などは普段右からの小手投げに足が送れずにバタッと行くところ、この日は終始右の攻めが良く、サッと体を左に寄せていったのも変化の兆し。
良い感覚をどこまでも体に刷り込ませ、確たる勝ちパターンへと昇華させることが、向こう数年を幕内の舞台で活躍し続けるための助けとなるだろう。



<平成30年の見どころ>
29年九州は地元で久々の上位挑戦場所となったが、秋場所後に路上で転倒し病床にあった師匠のために…と気負いすぎたか、怪我もあったようで無念の3勝12敗。
しかし、去る1月では早々に勝ち越して失地回復、もっか再起に向けてリハビリに励む師匠にも1場所遅れの吉報を届けられた。
嘉風・玉鷲という、30代をゆうに超えてから三役常連として全盛期を謳歌する同門の強豪は何よりの見本・手本になることだろう。「34歳での新関脇」なるか、最近の相撲ぶりを見るに個人的には大いにありうると考えている。