竜電剛至 出身:山梨 生年:平成2年 所属:高田川 身長:190センチ 体重:149キロ タイプ:もろ差し・外四つ寄り

<立合い分析>
プロフィール上は左四つと紹介される人ではあるが、カテゴリとしては出足相撲と評するのがもっとも適切であろう。190センチのリーチながらも頭から出て、上体を上げず低い姿勢のまま相手を正面に置きつつ前に出ていくことが理想だ。
立合いの狙いは相手によって比較的アレコレと変えているが、ともあれ視るポイントとしては、自分の呼吸で当たって素早く前傾を崩さず次の攻めに移れているかどうか。
少しクセのある構え方をするので、隙を突かれて当たり負け、上体が起きてしまったときは腰も高いので簡単に後退してしまうことが多く、右の股関節に欠陥があるため、変化技(特に自分の左側に変わられること)にも弱い。

踏み込み足:以前はもう少し併用していたように思うが、現在は右が大半。相手の突きをあてがう場合などに左から踏み込むのは稀勢の里と似ている。
手つき:先に手を付いてくる相手には後からチョン立ち気味 相手が遅い場合は先に左を下ろして待つ。右手の付き方がやや変則的で北勝富士のように僅かでも体重がかかと側に寄る瞬間があるので、その隙を狙われると当たり負けしやすい。九州3日目の明生戦などは、その(悪い意味での)代表作であった。
呼吸:決して独りよがりな仕切りをするタイプではなく、遅すぎたり早すぎたりということもないのだけど、微妙に呼吸が合わずに不成立(竜電側のつっかけ)となる場合が散見される。

<30年初場所後追記>
本当に苦労をしてきた人であるし、個人的な愛着も強い力士ゆえ、新入幕早々に厳しいことは書きたくないのだけど、この記事を読んだ上で、去る初場所に竜電の相撲を観た人がいるとすれば、立合いの構えが上記とは大きく異なっていることに気づいただろうし、その違いを放置したままには出来ないので、追記という形で記しておく。

一言で表すとすれば「大幅な悪化」であり、早急に改める必要がある。より具体的に大きく変わったのは、時間いっぱいの仕切り、立ち上がって足の位置を決めるや腰を割ってから立つまでの間、しきりに上体を揺らしてリラックスさせるようにし、この際相手と視線を殆ど合わせることなく、すなわち呼吸も合わせず、一切制止することもないまま自分だけの呼吸で勝手に突っ掛けていくのである。
おまけにその際の右手は仕切り線を大きく越えており(右手の仕切り線オーバーは十両時代にも散見されたが、その度合いが明らかなレベルにまで進んでいる)、日によっては左手の小さな仕切り線越えもみられる。
とりわけ勝ち星が伴いはじめた中盤以降は独りよがりな仕切りがエスカレート、なぜこの立合いを行司・審判は咎めず、相手力士も批判せず(伝わってこないだけか)、NHKの実況・解説もひたすら取り口の良さ(これ自体は実際に賞賛されるべきものであったが)を称えるばかりであるのかがまったく理解できなかった。
とはいえ、早晩そのような指摘は出てくるであろうし(初出は「大相撲中継」春場所展望号での黒姫山連載となりそうな予感)、今回は虚を突かれて立たされた対戦相手にせよ同じ轍を踏んでくれるほど甘くはない。結果仕切り直しの回数は激増することが予想されるところ、そのような状況を待つのではなく、自主的に、せめて十両時代の水準で立つことを意識してもらいたい。


<攻防分析>
本人は「右の使い方が課題」と話しているが、確かに左四つに渡った際は右足の送りが鈍く、相手の左を生かしてしまうケースが多いのに対し、却って右四つの相手に対して右差し、左から攻めていくときの方が左腰が早く前に出て前廻しの位置も浅く、型良く相手に密着する形を整えられている。
右四つの力士-特に胸や肩から当たってくるようなタイプ-は右を差してくる分、左を使いやすいので自然にそうした体勢を作りやすいし、右も差させてくれるので、右の差し手も効かせながら左で攻める体勢に持ち込みやすく、上記のようなタイプには戦績的にもかなり良い。
これが対左四つとなると、どうしても左差しで右から攻めることを強いられるため、攻めあぐねがちになってしまう(総じて左四つの力士は、右四つと比べ守りに秀でた粘っこいタイプが多いという事情もあるが)。
体調の問題もあり、あまり持久戦狙いも採れないので、突き起こして先手を取るなり、下手を引かれたらすぐに切ることを覚えるなりして、何かしら対処法を練りたいところだ。

突き放して来る力士に対してはね上げながら逆襲に転じていく取り方も発展途上ながら向上中。崩しながら押してくる相手も含め、ペースを握られると苦しいので、あくまで自分から一歩踏み込んで先手を取るような出方を目指したい。同じ一門に豪風・嘉風・松鳳山ら、この手のタイプの第一人者が揃っているのは大いなる財産であり、連合稽古などで十分に胸を借りている成果が本場所の土俵にも現れているのだと思う。


<平成30年の見どころ>
早くから将来を嘱望されたホープが、新十両場所での大怪我から序ノ口まで番付を落とし、番付外への降下を避けるため4場所連続で7番目の相撲だけを取り続けた。
本格復帰後も幕下上位で10場所かかっての十両復帰、十両でも7場所中6場所でコツコツと8~9番を重ね、遂に初土俵から12年、当初の期待からはずっと遅い、しかし余人をもって代えがたいほどの苦難を乗り越えた新入幕力士が誕生する。その努力と忍耐に、まずは最大級の賛辞を贈りたい。
九州場所千秋楽の取組でまた右の股関節周辺を悪くしたようなのは気がかりだが、冬巡業を予定通りこなしていたと聞いて一安心。来る新年初場所、待ち焦がれた舞台で怪我なく伸び伸びと取ってもらいたいものである。

大変な苦労をしてきたが、まだ27歳2ヶ月と十分に地力・体力を強化していける段階。身長に比べて過度に体重の重い力士が目立つ中、この人は上半身も下半身もさらに大きくなっていく余地が残されている。心技体すべてに伸びしろは多く、今後の成長にこそ大きな期待をかけて見守っていきたいと思う。
この身長で頭から行けるわけだから、四つに拘らず、玉鷲のような喉輪やおっつけ主体とした馬力型の押し相撲を志すのだって決して不可能な将来像ではないだろう。