輝大士 出身:石川 生年:平成6年 所属:高田川 身長:193センチ 体重:163キロ

<立合い分析>
長身で腰高の体型ながらも額でかまし、右で喉輪もしくは肩や胸のあたりを突き、左はハズ或いはおっつけにかかる構えで突き起こさんとするのが基本。まだまだ発展途上ではあるが、形よく当たって突き放しの手が伸びたときは、時折でも眼を見張るような迫力を示すようになってきた。30年初場所の蒼国来戦は代表作だ。
ただ、意外に(と言ってはなんだが)戦術的柔軟性は高く、左で突き・右を固めるようにして当たる左四つ対策も用いるし、小兵相手にはもろ手で出たり、体当たり加減に弾いてみたり。使い分け自体はまずまず効いているので、一つに絞る必要があるとは思わないし、現状のままそれぞれを伸ばしていけば良いのではないか。


踏み込み足:単純に立ち遅れた(∴どちらとも判じ難い)ような場合も少なくないが、それを除いても左右が半々くらい。例えば右差しの相手に左おっつけを効かせたいから左で踏み込む…など、個別の取組においては意図が把握できるものもあるが、同じような取り口に思える別の相手に逆の足から出たりするので、イマイチ分からないというのが正直なところ。

手つき
:相手に先に手を着かせてから自分が手をついていきたいタイプだが、相手が遅い場合は自分から先に左手を下ろしていく。ただ、どちらの場合にも右手を下ろさずに立つのが問題であった。
30年初場所ではこの点を改善し、ある程度相手との呼吸を合わせつつ先に両手を下ろして待つスタイルに変更。しかし負けが込んだところで手つきの位置を変えるなどあまり纏まっていない感も。。以前から手つきの方法は頻繁に変えており、迷いが伺える。
こういう体型の人なら、定石としては上から見たときに背中がぐうっと伸びて、長方形に見えるような仕切り方が良いとは言われるが、あくまで本人がより良い形を見出し、固めていくことが大前提。比較的タイプが似ている玉鷲にしても、30歳を大きく上回ってから最適な手つきの感覚を掴んで今の活躍に繋げているのだから、そう簡単なミッションではなさそうだが、出世を考えれば早ければ早いほど良いのも確かである。

呼吸
:竜電と同様、腰を割りながら小刻みに揺れる動作が散見される。兄弟子とは違い、一応静止してから立つようにはしているので大きな問題ではないが、悪い方向に進まないことを願いたい。



<攻防分析>
正攻法の突き押しで前に前に出る相撲を心がけ、愚直に貫く姿勢は立派。
ただ、どうしても腰高で前後左右への動きに融通が効きづらいため、動きの速い相手には回り込まわれて主導権を失い、出足のある突き押し相撲を取る人には当たり負け・低さ負けして腰が浮いたところを突かれ、幕内上位の地力を有するような体格に優れた四つ相撲の相手には、ガシっと受け止められると攻めきれずに組み止められてしまう場面が見られる。
それらすべての敗因を克服するにおいて、(まさに玉鷲がそうであったように)地道に当たりの強度及び確実性の向上を図るべきであることは自明だが、両立しうる武器として、その差し身の良さを生かす方向性は採りうるだろう。
この人の場合、長身の力士にありがちな定位置で反るようにしてもろ差しを狙うものではなく、突き放して前に出る流れの中、小さな動きで器用に左右の腕を潜りこませられる長所があり、腕の返し・突きつけも良い。この体で相手の中に入ってしまえば簡単に相手を自分の高さに引き上げられるので、窮屈に自分の体を屈めていくよりは合理的であると考える識者も多いようだ。

長身でスケールの大きさと差し身の良さをそれなりに両立させた先駆者としては双羽黒がいるが、彼は器用さという側面もありながら、何と言っても右四つ左上手でがっぷりになれば、ときに千代の富士をも凌駕する力強さがあった。輝も30年初場所、右四つの新鋭朝乃山と堂々渡り合い、左からの強烈な上手投げに仕留めた一番にはなかなかの凄みを感じさせたが、全般にはまだまだ迫力不足。これからも同世代の有望株を相手に圧倒するような勝ち味をドンドンと増やしてほしいものである。


<平成30年の見どころ>
28年は新入幕に始まり、返り入幕からその地位を固め、 29年は幕内定着を不動のものとしつつ、上位初挑戦の機会も作ってみせた。大器晩成の逸材、物凄い速さではないにせよ、順調に出世の階段を歩んでいるのは間違いないだろう。
年男となる30年の目標はズバリ「三役昇進」。遅れてきた兄弟子、物凄い勢いで追い上げる弟弟子など、活気ある部屋の環境にも好影響を受け、さあ、年6場所の間にどれだけ強くなるか。