土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

Category:幕下以下の力士 > 出羽海一門

武隈部屋 所在地 東京都大田区雪谷大塚町

<所属年寄・裏方一覧>
師匠 武隈(元大関・豪栄道)


<近況>
・令和4年1月27日、理事会で境川部屋からの独立が承認され、武隈部屋の創設が決定。内弟子3人を引き連れての船出となり、2月中旬には大田区の新部屋へと転居する予定。
・同日の理事会における発表事項は、上記創設の決定だけではなかった。昨年12月に行われた全日本アマチュア選手権で準優勝した神崎(近大)の三段目格付出しが承認され、武隈部屋からデビュー予定であることも明らかに。来る春場所、地元での初土俵となりそうだ。
→2月3日、武隈部屋入門が正式決定。



所属力士
西川(生年:平成10年 出身:大阪 身長:176センチ 体重:150キロ 初土俵:令和3年春)
師匠の武隈親方と同じ寝屋川の出身。埼玉栄高ー中大を経て、3年春、三段目格付出でデビューした。
最初の場所は順調に6連勝した後、7番目の相撲で勝ったと思いきや髷を掴んでおり痛恨の反則負け。2場所目も実力者の琴太豪に敗れて優勝こそ逃したが、3場所目にして幕下昇進を果たすと、2場所連続の5勝で上位近辺まで躍進。11月こそ首の怪我で途中休場したが、コンディションを調えて出場した4年初場所は、三役経験者・竜電を破る「ジャイキリ」を成し遂げ、見事幕下優勝の栄誉を勝ち取った。来る地元場所は関取挑戦の好機、新興部屋にいきなりの吉報を届けられるだろうか。

いかにも押し相撲向きの体つきで、期待に違わぬ正攻法の取り口。首の怪我は気がかりだが、去る初場所に関しては杞憂だと思わせるような内容の充実があった。
立合いでかまして相手を起こし、手数を出して後退させ、足を送って電車道で持っていく相撲が理想。とりわけ、左右(特に右)の突き放しには目を瞠るものがあるだけに、今後はおっつけやハズの精度も高め、徐々に完成度を上げていきたい。


竜口
(生年:平成15年早 出身:福岡 身長:175センチ 体重:117キロ 初土俵:令和3年春)
埼玉栄高出身で、西川・豪正龍と同じ3年春初土俵。右四つ、もしくは中に入って、なかなか巧い相撲を取る正統派は、デビュー以来勝ち越しを続ける順調な出世ぶり。4年春場所では三段目中位まで上がりそうだ。


豪正龍(生年:平成14年 出身:埼玉 身長:180センチ 体重:107キロ 初土俵:令和3年春)
埼玉栄高出身で、西川・竜口と同じ3年春初土俵。こちらはソップ型でアクロバティックな相撲が持ち味。1場所怪我による全休があったため竜口に遅れを取っているが、復帰以降は2場所連続の5勝で4年春は新三段目目前の地位まで番付を上げる。

神崎(生年:平成11年 出身:兵庫 身長:190センチ 体重:155キロ 初土俵:令和4年春)
近大附属高ー近大。抜群の体躯を生かした突き押しを武器に実績を残し、昨年12月の全日本アマチュア選手権で準優勝したことも記憶に新しい。
2月3日、近畿大学構内にて親方同席のもと会見が行われ、武隈部屋入門が正式決定。来る春場所、三段目格付出しでのデビューが予定されている。
ひとまずの目標は、来年の地元場所に関取として帰ることか。同じ学生出身の西川はもちろん、ほぼ同じ位置からスタートを切る竜口、豪正龍にとっても刺激になりそうで、相乗効果を生み出すことは間違いないだろう。

本人のコメント、詳細なプロフィール等は下記リンクも参照。





参考資料

『相撲』 ベースボール・マガジン社
日本相撲協会公式サイト

武隈部屋創設についての詳細は以下の記事もご参照ください。






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出羽海部屋

<所属年寄・裏方一覧>
師匠 出羽海(元幕内・小城ノ花)
年寄 中立(元小結・小城錦)
年寄 高崎(元幕内・金開山)
行司 木村千鷲(十両格行司)
呼出 陽平(十両呼出)
床山 床力(三等床山)
世話人 福隆岳(元十両・福隆岳)


<近況>
・ベテラン海龍、4年初場所でおよそ4年半ぶりの5枚目以内が濃厚。高齢新十両へ好機到来だ。
・相乗効果で若手も台頭。モンゴル出身・出羽ノ龍は同場所で初の一桁枚数に躍進する。
・参与の出来山親方、再雇用期間満了につき3年夏場所限り退職。昭和49年の初土俵以来、長きに渡る勤めを終えた。



海龍(生年:平成2年 出身:和歌山 身長:178センチ 体重:140キロ 初土俵:平成17年春)
御嶽海の付け人としても知られる幕下上位常連力士。御嶽海2度の幕内優勝時に花道で待ち受け、熱い抱擁をかわしたシーンが印象的だ。
念願の十両昇進が遠のいたかに見える時期もあったが、諦めずに再浮上を期し、30歳を越えても意気軒昂。3年秋・九州と好調に5勝を重ねて、4年初場所ではおよそ4年半ぶりに5枚目以内(通算8場所目)へと帰ってくる。来る場所が節目の通算100場所目、遅咲きのキャリアに満開の花を咲かせるにはまたとない機会だ。

最上位復帰にあたって、リンク先の記事以来、おそよ6年ぶりに解析モードで観たのだが、当時指摘していたような課題が概ね改善されていることに驚いた。つまり、突っ張りの回転は早く、右に偏っていた攻めは左の使い方が良くなって突き押しのバランス向上、何より相撲ぶりが積極的に、捌くイメージが強かった20代半ば頃より数段若々しくなっている。
相手に圧力が十分に伝わり、なおかつ攻める意識が強まったことで、その後の崩しもより効果的に。とりわけ3年九州は、場所前に腰を悪くしていたこともあってか、いつにも増して立ち合いから先手を取りたいという意欲が強く、対戦歴の多い力士ほど意表を突かれていた。
ここ数年で強みを増した左(もろ)差しからの寄りも、年相応に丸みが出てきた腹を突きつけながらの密着感が良く、オプションとしては高性能。ベテランらしく相手に応じて戦術を噛み合せながら、主導権を渡さぬまま取り切ることができれば、5枚目以内でも通用する余地は大いにあるだろう。


出羽ノ龍(生年:平成13年 出身:モンゴル 身長:179センチ 体重:145キロ 初土俵:令和元年秋)
福岡の希望が丘高相撲部を経て入門したモンゴル出身の新鋭。
令和元年2月から部屋で研修を受け、9月に新弟子検査を受験。翌11月前相撲を取り、明けて2年初場所序ノ口で6勝、続く春場所では見事序二段優勝の栄誉に輝いた。3年1月新幕下、2度目の昇進となった5月には最初の相撲から6連勝して阿炎と優勝を争い、翌7月も5勝で9月は初の15枚目以内。跳ね返されて迎えた11月にまた6勝の大勝ちを果たし、新年はいよいよ一桁番付躍進を確実な情勢としている。

モンゴル出身力士としては珍しい中背のあんこ型は、風貌や根が左四つであることも含め魁(芝田山)と似ている。デビュー当初は押し相撲を伸ばしていきたいと話していたように記憶しているが、最近の相撲を観ている限りは概ね四つ相撲。初の15枚目以内で負け越した3年秋場所は、経験豊富な中堅~ベテラン級の相手と四つに渡り合って地力負け・体力負けする内容が多く、5枚目近辺までくれば尚の事相手は強くなる。
その点、右の使い方が大きく、顎も上がって胸を合わせてしまいがちな四つ具合には改善の余地があり、できることなら序盤戦の突っ張りを用いるなどの工夫も求めたい。
突き押し相手に対しては、ガチッと腰が決まった姿勢で受け止め、逆に左右のおっつけ・ハズで反撃していくような内容が見られるだけに、大きい相手に対し、自分の側からそういう相撲を取っていく形に変わっていけば、体型に見合った嫌らしさが出てくるのではないかと思う。
相撲協会のYouTubeコンテンツ「アーカイブ場所」を視聴している身として、古い名前を出させてもらうなら、先ごろ退職された待乳山親方の播竜山は、ちょうど身長・体重が同じくらいで、今後の出羽ノ龍に目指してほしい取り方をしていた力士と言えるだろう。


小城ノ正
(生年:平成5年 出身:大阪 身長:180センチ 体重:127キロ 初土俵:平成21年春 )
しこ名の通りに正攻法を貫く突き押しが魅力。相手と密着してハズにかかるなりしたときの圧力には見るべきものがあるだけに、膝の負傷などで下半身が硬く、上体を起こされたり、横に揺さぶられたりした際の脆さが惜しい。
ここ1~2年、一つ当たってから右を差して相手に密着する隆の勝のような勝ち味が現れ始め、3年名古屋ではおよそ5年半ぶりに最高位更新(東22)。体調の問題でどうしても好不調の波が大きく、番付こそ安定しないものの、本人の中で軸となる感覚自体は芽生えているはず。部屋全体の上昇ムードにも触発されながら、来年は上位15枚目以内への進出を!

ちなみに、入門時(旧田子ノ浦部屋)の体重は142キロで今よりも15キロくらい重かった。一度締まってから、もう一度140キロ前後まで増えた時期もあるが、最近は膝への影響も考慮してか130キロ前後に落ち着いている。


小城ノ浜
(生年:平成6年 出身:神奈川 身長:180センチ 体重:159キロ 初土俵:平成22年春)
最高位幕下25枚目の実力者。海龍、小城ノ正らと同様、久島海の旧田子ノ浦部屋からの移籍組だ。
31年は左足首の手術により3場所連続の全休を経験して序二段下位にまで降下。その後順調に番付を戻して令和2年7月幕下復帰するも、翌9月に今度は右足親指を脱臼してしまう。
験直しも兼ねてか、2年11月には四股名を慣れ親しんだ碧海浜から小城ノ浜へと改め、3年1月三段目優勝で効果覿面かに思われたが、今度は5月に再度左足首を痛めて休場と、とにかく怪我に悩まされ続けている。三段目最上位から始まる令和4年は、皆勤を続け、なんとか最高位の更新を目指したい。
取り口については、記事の一番後ろに添付している令和2年度版の記事にて詳述しているので、そちらを参照してください。


出羽ノ城(生年:平成5年 出身:栃木 身長:190センチ 体重:235キロ 初土俵:平成24年春)
令和2年春、デビュー8年で幕下の地位を掴んだ角界随一の巨漢力士。相手の顔を見ながらがっちり極め上げる攻めに満点の迫力を有するが、幕下ともなれば、まともに受けて引っ張り込むだけの立ち合いで相手を起こすことはできず、防戦に終始。
9場所ぶり2度目の幕下となった3年九州も、初日の朝稽古でぎっくり腰を患い、2勝止まりだった。

何も頭から当たることを覚える必要はないが、喉輪で相手を起こすなり、片一方の手は絶対差し負けないようにして食い下がりを防ぐなり、立ち合いの強化に向けてやれることは多い。幕下定着という次の目標に向け、大いなる研究を望む。


出羽大海(生年:平成8年 出身:沖縄 身長:186センチ 体重116キロ 初土俵:平成24年春)
かつては、左肩の脱臼グセで何度となく休場を強いられ、三段目に上がっては休んで序二段に逆戻りという状況が続いていた。しかし、30年秋~九州と連続休場で序ノ口まで落ちた31年初場所以降は皆勤出場、そればかりか番付の上でも令和2年以降は最高位を立て続けに更新するなど快進撃を繰り広げ、9月には念願の新幕下。四股名を松山から以前名乗っていた出羽大海に戻して挑んだこの場所でも5勝をあげて鮮烈な印象を残した。
翌場所中位で大敗して以降、1年ほど下位の番付が続いてはいるが、見方を変えれば、決して勢い任せの番付上昇ではなく、しっかり幕下に定着できるだけの地力を持っていたということ。次の1年は中位で通じるべく、一層体力と技術に磨きをかけていきたい。

長身ソップ型で手足が長く、精悍な顔立ち・・・でありながら、ちょっとした仕草に愛嬌もあり、番付を上げれば、そうしたギャップも含めて人気が出そう。
持ち味は、柔道経験者らしく廻しを引いての荒技。現在は肩への影響を考慮して前哨戦での突きを磨いているが、腰が引けているので決め手にはなりづらく、叩き・いなしや足技なども絡めつつ、結局は深い上手で振り回すような相撲が多い。派手さがあって面白い反面、現状のままではまた肩を痛めたり、膝や腰に負担をかけたりという危険性と無縁ではいられない。突きの威力を高められるに越したことはないが、理想は、やはり前廻しを引いて食い下がる形。同じように肩の脱臼に苦しみながら克服、幕内上位まで上り詰めた荒鷲を目標に据えたい。


龍成山(生年:平成3年 出身:東京 身長:172センチ 体重:151キロ 初土俵:平成19年春)
幕下以下を長く観ている人は瓦海・出羽東の四股名で記憶しているかもしれない。最高位三段目5枚目の実力者だが、膝を悪くするなどして休場が続き、2年後半には序ノ口まで降下。11月からは現四股名に改め、3年夏には三段目に復帰するなど再起への道を歩んでいる。
最高位の頃は120キロ台前半だった体重が、昨年の「相撲」5月名鑑号で139キロ、今年5月の同号では144キロと推移した上、現在は151キロまで増えており、膝への負担としてはどうなのかという気もするが、馬力を重視して早い勝ち味を目指す方向づけだろうか。


山藤(生年:平成13年 出身:岐阜 身長:176センチ 体重:118キロ 初土俵:平成29年春)
相撲経験を有して中学卒業後に入門。1年半で三段目に上がり(30年9月)、本場所休止を挟んだ2年7月から三段目に定着。1場所おきに最高位を更新した3年は、納めの11月に西21枚目で3勝4敗。4年中には幕下昇進のチャンスが訪れるかもしれない。
軽量ながら足腰の良さが目立つ期待株。それがため負担もかかりやすく、右膝にサポーターが手放せなくなっているのは気がかり。右差しで食い下がり左から攻めるのが本来の形だとは思うが、その体勢になるまでが難しく、相手の相撲に合わせてしまいやすい点をどのような工夫で潰していけるだろうか。


清田(生年:平成15年 出身:福島 身長:177センチ 体重:116キロ 初土俵:平成31年春)
出羽海部屋の幕下力士として長く在籍した清の海(最高位幕下2枚目)を父に持つ。
中学卒業後の入門から1年足らずでの三段目昇進(2年1月)、3年夏に6勝の大勝ちを果たし、翌名古屋場所では東15枚目まで躍進している。
取り口や体型は2年先輩の山藤と似ているが、番付の面でほぼ追いつきつつあるのは、それだけ強引な投げ技が減り、前へ仕掛けていかんとする意識の定着が早いから。
番付のみならず内容の面でも互いを意識し合うことが、将来にわたって好循環を生み出す続けるだろう。


永田(生年:平成14年 出身:静岡 身長:167センチ 体重:111キロ 初土俵:令和3年初)
飛龍高校での相撲経験を経て、3年初場所初土俵。5場所連続の勝ち越しで、新年は三段目中位まで番付を上げる。得意は突き押しとされるが、プロ入り後の決まり手としては、前に出ながら中に入っての寄り切りが群を抜いて多い。今後はやや上体が起きがちな点を直していきたいところだ。


出羽の空(生年:平成11年 出身:長崎 身長:180センチ 体重:137キロ 初土俵:平成27年春)
部屋付きの高崎親方と同じ長崎県大村市の出身。中学時代はラグビーをしており、相撲経験なく15歳で入門。序二段中位~下位が長く、上位に進んでからも一押しが出ずに苦労していたが、2年11月に5年半かけての新三段目。3年九州には序二段最上位で5勝をあげて、来る初場所は最高位の大幅な更新が確実視される。
固太りの体型に見合った押し相撲得意。ラグビー時代の名残というわけでもないのだろうが、相手の圧力を逃がすような動作に長けているのも特徴で、再起途上の土佐緑を突き落としたり、勝呂(現・藤闘志)を引き落として、デビュー後初となる黒星(決定戦除く)をつけたり、しばしば格上と見られた相手を倒し、驚きを提供している。


小城虎(生年:平成15年早 出身:愛知 身長:173センチ 体重:100キロ 初土俵:平成30年春)
相撲経験なく中学卒業後に入門。四股名は師匠の「小城」に加え、スカウトを受けた元出羽海部屋の幕下久之「虎」からも一字を貰っている。
相撲内容は真摯そのもの。序ノ口や序二段下位の頃から時々観ては、小さな体でその敢闘精神あふれる取り口に感心していたが、3年九州、初土俵から4年掛からず三段目昇進を果たしたと知り、思わず「頑張ったなあ」と声が出た。2勝5敗の結果自体はやむを得ないところ、1場所でも早く三段目に戻るため、さらなる研鑽を積んでくれるにちがいない。


清の花(生年:平成17年 出身:福島 身長:171センチ 体重:82キロ 初土俵:令和3年春)
実兄は三段目の清田。デビューから半年後の3年9月に序二段下位で6番勝って11月は早くも一桁枚数。惜しくも1点の負け越しに終わったが、令和4年内には三段目昇進を果たしそうな勢いだ。
四股名に関して、兄が本名のままなのは、別の部屋に同音力士がいるため今すぐには父の四股名(清の海)を継げないという事情があるらしい。ゆえに、弟が先んじて師匠(小城ノ花)から一字を貰った現四股名を名乗っている。


岡ノ城(生年:平成15年 出身:福島 身長:166センチ 体重:101キロ 初土俵:平成31年春)
相撲経験を有して中学卒業後に入門。3年夏場所で記録した序二段東29枚目が最高位も、まだ中位以上で勝ち越しがなく、次の目標は明確だ。
というのも、1年先輩の小城虎がまさに1年前同じような状況にあり、今年(3年)名古屋で初めて勝ち越した(西60枚目)ところからの三段目昇進。体つきも、気風の良い取り口も兄弟子と似通っているとあって、良き手本に続かぬ手はないだろう。




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境川部屋 所在地 東京都足立区舎人

<所属年寄・裏方一覧>
師匠 境川(元小結・両国)
年寄 関ノ戸(元小結・岩木山)
年寄 武隈(元大関・豪栄道)
年寄 山科(元幕内・豊響)
年寄 振分(元幕内・寶智山)
年寄 出来山(元幕内・佐田の富士)
呼出 雄志(序ノ口呼出)
床山 床隆(三等床山)
床山 床輝(四等床山)



<近況>
・響龍さんの死から3ヶ月以上が経った。改めて故人のご冥福をお祈りするとともに、協会による安全対策の取り組みが絶えず進展していくことを切望してやまない(名古屋場所後には新たに安全管理委員会の設置が発表されている)。
・平成22年秋の城ノ龍以来となる新十両誕生へ!平戸海が勝負の秋場所に挑む。
・前年度分から部屋付親方の名跡が大シャッフル。3年名古屋限りで引退の豊響が山科を襲名(所謂借株ではなく取得)したことに伴い、元佐田の富士は山科→出来山へ、また元寶智山も2年12月付で7年間名乗ってきた君ヶ濱から振分に名跡変更している。
・前年の3名に続き、今年も4名の新弟子が入門。3年春・三段目格付出デビューの西川もその1人で、まずは順調に番付を上げている。


主な注目力士
平戸海(生年:平成12年 出身:長崎 身長:175センチ 体重:131キロ 初土俵:平成28年春)
中学卒業後の入門(28年春)から3年で幕下昇進。元年九州では、全勝対決となった6番目の相撲で照ノ富士を相手に敢然と立ち向かい、惜敗したとはいえ、観るものに強い印象を残した。
2年九州で初めて15枚目以内に進むと、翌年夏には一桁、同名古屋では5枚目以内とスムーズに通過。惜しくも最後の相撲で敗れ、新十両は秋場所以降に持ち越しとなったが、部屋としては佐田の海以来となる叩き上げからの関取誕生へ待ったなしの情勢だ。

小〜中と実績を残してきただけあって、腰から下の力を活用するのが非常に上手く、早い出世ぶりにも納得。左前廻しを引いて食いつく相撲を得意とするが、一つ突いて起こしてから組み付くことを知っているし、ここ最近は型云々の前に出足だけで勝負をつけてしまう場面も目立ってきた。
組んでからも、頭を付ける体勢への持ち込み方や廻しを切る動作の素早さ、寄っていく際の腰の寄せ方など、どれをとってもセンスの高さを感じさせるし、左上手を引いた際に頭が左(上手の側)を向きがちな癖も改善傾向にある。

前年度分で「番付の向上に追いついていない感が残る」と書いた体力面の向上も進み、最新のデータで130キロ台(入門時から40キロ近く増)を計測した。相応の技術を持ちながら、上手さに頼らず、猛稽古で体を作り、押す力をつけることに集中して、本場所の土俵でもそういう相撲に徹することができる精神的な強さも見事の一言。
十両のかかった3年名古屋は、立合い変化をはじめ、珍しく後ろに下がって何かをしようという内容が数番見られたものの、それ自体はある意味当然のこと。反省すべきは反省しながら、次の場所に向かっていけば、自ずと結果はついてくるだろう。

しいて課題を挙げるとすれば、過去3場所(3年春・夏・名古屋)で喫した8敗のうち、突き落とし・はたき込みによるものが6つもあること。細かく論じ始めると長くなるので省略するが、ざっくり書くと、腰を落とすのではなく、頭を上下させる動きで対応しようとする隙を突かれているのが原因で、突き起こされたときなどに腰が反りやすい癖があるのも、体勢の素早い復元を阻んでいるようだ。
こういった部分も今後少しずつ直していくことが期待されるし、実際センスのある人なので、順を追って良くなるのではないか。
将来図としては、(平戸海の方が一回り小さくはあるが)巨砲のような技能的敢闘相撲の担い手が思い浮かぶ。


對馬洋
(生年:平成5年 出身:長崎 身長:184センチ 体重:134キロ 初土俵:平成28年夏)
諫早農→日大という経歴は師匠とまったく同じ。バランスの取れた体型と派手な相撲内容、さらには端正なルックスも相まって、関取経験がない現時点でも一定の人気がある。
31年春には幕下6枚目まで上昇するも、2勝5敗に終わった場所後、長く不安を抱えていた右肩の手術に踏み切ったため、夏~名古屋と全休。再起途上、2年初場所前の稽古で今度は左肩を負傷した。
それでも、本場所再開明けの7月に大勝ちして、9月は最高位タイまで戻ったが、またも跳ね返される(2勝5敗)と、西20枚目で迎えた3年春は右のふくらはぎの肉離れで全休。
休場明けの3年夏~翌名古屋と連続で6勝して一気に番付を戻すあたり、上位を張るだけの力量に疑いはない。とにかく怪我の多さが上位定着を阻んでいる現状だ。

抜群の反射神経を生かしたスピード感溢れる取り口に目が行きやすい力士も、最大の魅力は得意の右を差した際の理に適った攻め筋。右腕の返し・左からのおっつけともに良く、差した側へ素早く体を寄せ、相手と十分に密着しながら、がぶって相手の腰をすっかり伸ばしてしまう詰めの完成度はきわめて高い。
ただ、幕下ともなれば軽量であるがため簡単にその体勢を許してもらえないのも確か。打開策として(かち上げ気味の立合いも併用しつつ)序盤の突き放しを用いるも、左膝など下半身に故障を抱えることで足運びがバタついてしまい、肝腎の右脇がむしろ甘くなってしまう問題点を抱えている。
突破を許した右から強引な小手投げで振り回す場面も見られ、反応の速さゆえ決まりこそしていたが、やはり右肩への負担は甚大であった。加えて、右から投げを打つ際の軸足となる左膝にも古傷を抱えており、悪いところを庇うあまりか、さらに左肩→右ふくらはぎと反対側の領域にも怪我が出始めた状況はあまり楽観できない。
ここ数場所で言えば、家賃が安めの地位ということもあって、怪我に結びつきやすい仕掛けはあまり見られないが、年齢的にも、上位の番付で体の大きい相手にどういう相撲を取れるかにかかっている。その点、15枚目以内に戻る秋場所の内容は試金石となりそうだ。


田中山
(生年:平成14年 出身:東京  身長:183センチ 体重:129キロ)
新潟・海洋高を中退して30年夏場所初土俵。デビュー時には、黒姫山の孫(北の洋のひ孫)として注目を浴びたが、期待値の高さに違わず8場所連続勝ち越し、ノンストップで幕下に上がったのは見事だった。1場所で跳ね返されて以降は幕下と三段目の往復に2年近くを費やしているが、19歳の若さを思えば焦る必要はない。体重も前年度分の118キロから129キロと順調に増えており、幕下の壁を突き破って、一気の上昇を果たすまでの潜伏期を有意義に過ごしているのが現状だろう。

取り口としては、右足から一つ踏み込んでおいての左差し狙い。右上手よりも先に左の廻しを引いて食い下がりの起点としたい意図が見られ、左差し右おっつけの型で速攻に移るのが理想の流れ。
差せないと見るや突きに変えて出ていこうとするのも悪くないのだが、気になるのは、跳ねるような足運びで出足が伴わないにも関わらず、慌てて攻めようとするきらいがあること。立合いで腕に力が入りすぎているように見えるのも、前に落とされやすい傾向を助長している。

左差し速攻で取りたい相撲の性質、強靭な下半身を生かし、粘っこい土俵際を展開する体質とも、祖父よりも曽祖父によく似ており、それゆえ「昭和の名力士」DVDで北の洋の相撲を徹底的に研究、自分の中に落とし込んでほしいというのが、筆者のきわめて個人的な願い。
「早く攻める」のではなく、「早く良い体勢になって攻める」というのは、同作において北の洋さん(筆者の世代では緒方昇さんという方がしっくり来るのだが)が述べている内容の一つ。現在の田中山にとっての金言ではないかと思う。


西川(生年:平成10年 出身:大阪 身長:176センチ 体重:155キロ 初土俵:令和3年春)
部屋付きの武隈親方と同じ寝屋川の出身。埼玉栄高ー中大を経て、3年春、三段目格付出でデビューした。
最初の場所は順調に6連勝した後、7番目の相撲で勝ったと思いきや髷を掴んでおり痛恨の反則負け、2場所目も実力者の琴太豪に敗れて優勝こそ逃したが、3場所目にして幕下昇進を果たすと、新幕下場所も5勝2敗とまずまずの成績で終えている。

いかにも押し相撲向きの体つきで、期待に違わぬ正攻法の取り口。
当初は学生出身特有の大事に取ろうとする意識が見られたものの、去る名古屋場所、前半の内に2敗したことである意味吹っ切れたのか、その後は目の覚めるような出足を見せた。
立合いかまして相手を起こし、手数を出して後退させ、足を送って電車道で持っていく相撲が理想。押し相撲寄りの山科(豊響)というよりは、突きの間合いに入りたいタイプと見るが、おっつけやハズの精度も高め、徐々に完成度を上げていきたい。



幕下以下、その他の所属力士
豊翔(生年:平成6年 出身:鹿児島 身長:173センチ 体重:126キロ 初土俵:平成25年春)
奄美大島の大先輩・里山(千賀ノ浦親方)と同じ鹿児島商高出身。
本名の榮で取っていた時期は休場が多かったものの、29年春の改名以後は一度も全休なし。それでも膝や腰の状態にはムラがあり、なかなか幕下定着を果たせずにいたが、2年九州から3場所連続で最高位を更新して、初めて幕下の上半分を経験。だいぶ体が大きくなって押されなくなり、持ち前の低さを生かした押し相撲に安定性が出てきた。
この部屋の力士の宿命なのか、距離を取られたときに相手の手を払う動きで足を揃えてしまうため、前に落ちやすい欠点を有しているが、それを克服するためにも、解説時に千賀ノ浦さんが話していた通り、左前廻しを引いて食い下がる相撲の習熟度を深めていきたい。


克乃富士(生年:昭和59年 出身:青森 身長:181センチ 体重:144キロ 初土俵:平成15年初)
五所川原商高出身で最高位は幕下15枚目。
37歳の大ベテランは、3年名古屋場所に幕下42枚目で5勝と元気いっぱいだ。平成29年九州以来となる幕下での勝ち越しで、秋場所は28年夏以来となる幕下20枚目台進出か。
得意は右四つ。3年名古屋13日目(時乃平戦)で見せた、おっつけながらの左巻き替え、右腰に食いつき、相手の苦し紛れの投げに対し、吸い付くように腰を寄せていくあたりの上手さは関取級。


勝誠(生年:昭和61年 出身:鹿児島 身長:167センチ 体重:125キロ 初土俵:平成17年春)
引退した豊響(山科親方)と同じ響高相撲部出身で、最高位幕下3枚目のベテラン。
令和2年は元気で、久々に幕下上位近辺まで帰ってきたが、15枚目以内への復帰は叶わず。


佐田ノ輝
(生年:平成7年 出身:モンゴル 身長:187センチ 体重:140キロ 初土俵:平成26年春)
部屋OBの元十両・城ノ龍に誘われて来日を決意し、26年春初土俵。
元年秋に三段目優勝、デビューから5年半かけての幕下昇進を決めたが、3場所連続の負け越しで三段目に逆戻り。2年11月前の稽古で右膝を痛め、翌初場所は三段目下位まで番付を下げるも、そこから3場所連続の大勝ちで幕下に復帰すると、3年名古屋では通算在位4場所目で初めて勝ち越した。

一応の得意は右四つだが、少し器用になんでもやろうとする意識が強すぎるのか、結果的に軸となるものが見えにくい感がある。立ち合いもいろんなパターンを具えているが、立派な体つきをしているのだし、自信をもって体当たり気味に踏み込んでいく姿勢を一貫させるくらいが丁度いいのかもしれない。


西乃龍
(生年:平成12年 出身:大阪 身長:179センチ 体重:123キロ 初土俵:平成30年九州)
埼玉栄高出身。実父の元幕内常の山が十両時代に名乗っていた四股名を譲り受け、30年九州の初土俵からおよそ2年で幕下昇進を果たした。跳ね返されて三段目が3場所続くも、秋場所には最高位を更新する形での幕下復帰が濃厚。来年にかけて、まずは定着が目標だ。
筋肉質の体型・キビキビとした動き・闘志あふれる土俵態度と、お父さんの現役時を彷彿とさせる要素はたっぷり。


阿蘇ノ山
(生年:平成11年 出身:熊本 身長:175センチ 体重:155キロ 初土俵:平成30年初)
文徳高出身。本名の中西でデビューし、1年後の31年初場所から阿蘇錦、更にその1年半後の令和2年7月から現四股名の阿蘇ノ山へと改めている。
2度ほど全休した分、やや出世は遅れたものの、地力があるので出場した場所の戦績は良く、初土俵からおよそ3年で幕下昇進。3年夏に右肩を痛めて大敗し三段目陥落となったが、重傷ではなく翌名古屋は東29枚目で5勝。近々の幕下復帰自体は難しくないだろう。
ずんぐりとした体型で、押すにせよ流れで右を差すにせよ、前に前に走っていく気風の良い取り口だ。


謙信(生年:平成8年 出身:新潟 身長:172センチ 体重:122キロ 初土俵:平成27年初)
新潟の高田農高出身、母方のいとこが部屋付の関ノ戸親方(元小結・岩木山)という縁がある。
膝の怪我などで何度も番付を下げながら、不屈の闘志で立ち上がり、3年名古屋では西13枚目まで躍進。いよいよ幕下が視界に入るところまでやってきた。
本名が3代横綱と同じ(=丸山)ということで、デビュー時から(郷土の英傑にあたる)謙信を名乗っているが、どちらにせよ大きな四股名である。


佐田の豪(生年:平成11年早 出身:長崎 身長:181センチ 体重:125キロ 初土俵:26年夏)
中学卒業後に入門。デビュー前に相撲の経験があり、新三段目まで3年もまずまずのスピード。ただ、その後は序二段が長く、大所帯の部屋で目立つ存在ではなかった。
令和になって以降やおら番付を上げ始めるも、成績的には4勝が多かった分、同様に目立たず。ところが、2年9月に55枚目で6番勝って、一気に一桁まで番付を上げるや、その場所で見事に4-3と勝ち越し、三段目中位を経験することなく幕下昇進を決めてしまった。
得意は右四つで、左膝の上に手を置き、右手は軽く開いた状態から仕切りに入っていく構えは部屋付きの武隈さんそっくり。背格好も似ている分、豪栄道のファンとしては期待せずにいられない「新豪様」だ。


佐田ノ国
(生年:昭和63年 出身:長崎 身長:182センチ 体重:114キロ 初土俵:平成16年春)
中学卒業後の入門で、平成25年名古屋に記録した幕下49枚目が自己最高位かつ唯一の幕下在位場所。33歳になっても地力の衰えはなく、三段目上位~中位近辺を往復しながら、久々の幕下を目指し奮闘している。初土俵以来、700回以上一度も休まず皆勤を続けているのは立派。


佐田の龍(生年:平成2年 出身:長崎 身長:178センチ 体重:146キロ 初土俵:平成21年初)
膝の故障によって一時番付外まで落ちながら、地道に番付を高め、高校卒業後の入門から8年半かけて幕下昇進を果たした苦労人。膝の故障歴にも関わらず、深く膝を曲げた前傾姿勢を保ち、外ハズで相手を起こしてから前廻しを引いて食い下がる我慢の取り口は見応えたっぷりだ。
元年にはまたも2場所全休で序二段まで落ちたが、九州での復帰後は大勝を続け、幕下目前の地位を回復。地元場所での復帰を機に小浜海から改めた新四股名でまずは幕下に戻りたい。

・・・と書いたのが前年度分。令和3年以降、また休場が続き、秋場所では序ノ口への降下が確実になってしまった。
何とか今一度の再起を願いたいが、いかんせん情報がなく気を揉んでいる。


佐田剛
(生年:平成10年 出身:東京 身長:183センチ 体重:148キロ 初土俵:平成29年春)
日体大柏高出身。序二段に在位していた31年、6戦全勝同士で復帰場所の照ノ富士と対戦している。
これまでに序二段一桁番付を3度経験しているが、まだ三段目昇進には至っていない。


竜口(生年:平成15年早 出身:福岡 身長:175センチ 体重:117キロ 初土俵:令和3年春)
埼玉栄高出身で、3年春初土俵カルテットの一人。右四つ、もしくは中に入って、なかなか巧い相撲を取る正統派。


豪正龍(生年:平成14年 出身:埼玉 身長:180センチ 体重:100キロ 初土俵:令和3年春)
埼玉栄高出身で、3年春初土俵カルテットの一人。こちらはソップ型でアクロバティックな相撲を取る。


周防灘(生年:平成12年 出身:山口 身長:179センチ 体重:128キロ 初土俵:平成31年初)
相撲経験はないが、高校卒業後の角界入りを見据え、山口鴻城高でレスリングをしていた。
最高位は序二段62枚目。2年11月、本名の大石から現四股名へと改名した。


房州山(生年:平成16年 出身:千葉 出身:187センチ 体重:149キロ 初土俵:令和2年春)
2年春初土俵トリオの一人。相撲経験を有し、中学卒業後に入門した。堂々たる体躯でこれからが楽しみ。2年11月、本名の東海から現四股名に改名。


佐田の城(生年:平成17年早 出身:千葉 身長:171センチ 体重:132キロ 初土俵:令和2年春)
2年春初土俵トリオの一人。房州山と同じく、中学時代は柔道をしていた。2年11月、本名の山口から現四股名に改名。


水野
(生年:平成17年 出身:岐阜 身長:175センチ 体重:127キロ 初土俵:令和3年春)
3年春初土俵カルテットの一人で、相撲経験を有し、中学卒業後に入門。コロナ禍で新序出世披露が夏場所に持ち越された影響か(それにしても早いが)、お披露目の舞台に早くも髷を結った姿で現れ、異彩を放っていた。


肥州山(生年:平成16年 出身:熊本 身長:169センチ 体重:114キロ 初土俵:令和2年春)
2年春初土俵トリオの一人。相撲経験を有し、中学卒業後に入門した。2年11月、本名の吉野から「起重機」肥州山(ひしゅうざん)と同名の大きな四股名を貰った(読みはひしゅうやま)。
3年夏の時点からかなり右膝が悪そうで、名古屋は全休。まだ17歳、まずは回復に専念してほしい。




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