昨日までの暑さが嘘のように涼しくなった両国の空から、秋風とともに嘉風引退という寂しく辛いニュースが舞い込んできました。「土俵で散りたかった」という本人のコメントが身に沁みるのなんの、当ブログ的にも非常に思い出深く、取り口分析の楽しさを教えてくれた最大の存在と言える力士。もうその相撲が観られないという事実をまだ受け止めきれずにいます。
※今日の鶴竜の一番について詳しく書いていたら疲れてしまったので、貴景勝以下はざっくり。まあ、明日以降も書ければ随時書いていくつもりなので…
鶴竜 4-1
昨日伝言板で書いた通り、反応は鋭いながら今ひとつ腰が安定せず攻めも上ずり加減で、相手を運び去る(攻めきる)だけの根拠に欠けているというのが正直な感想。4日間観て不安が消えぬままだったので一足早く触れてみたのですが、結果として今日敗れ、後出しにならなかったのは良かったのかどうか…
白鵬と同じように満身創痍で土俵に上がっていますから、状態良く場所に入ったとしても、いつどのタイミングで体に変調が起きてもおかしくない身。腰が悪いという先入観がある分、3日目の碧山戦で少し嫌な腰の入り方をしただとか少しの異変も目についてしまいますが、ともあれ万全とは言い難い体調で土俵に上がっていることは想像に難くありません。
今日の一番、立ち合いは右差し左前廻し狙いで立つも、(先場所とは違い)かまして立ってきた朝乃山の立ち合い良く、右を割り込みながら左でぐいっとばかり引っ張り込まれると忽ち上体が起きてしまう。右からの投げも左からの予備動作なく不十分な仕掛けで、呼び込んで左上手を許すわ左は巻き替えられないわで散々。万全の体勢で寄り詰める朝に対し、胸を合わされた鶴は抵抗できずに下がるだけ。俵を頼りにした右下手投げを捨て身の一手とするが、これも右を十分に返されているために左からの仕掛けなく、腕の力だけで打つような格好では残しようがありませんでした。
この横綱の主要な負けパターンと言えば、自分より大きい相手に引っ張り込まれて胸を合わされるか、角度良く押されてまともな引きを出してしまうか。それに加え、腰の不安を衝いた前後の揺さぶりも効きそう。
残りの対戦相手にそうしたタイプの難敵が多く、今日の相撲を観る限りあまり楽観できませんが、先場所の友風みたく相手の研究いかんもあるにせよ、一番は体調に合わせた取り口を纏め上げる自分自身との戦いでしょう。
豪栄道 4-1
現時点で「鶴竜と豪栄道どちらが好調か」と問われれば、即答で後者と答える。3日目苦手の遠藤に対し、悪い癖の左に固執する取り口で星を落としましたが、それ以外の相撲は踏み込み・出足ともに鋭く、止まらず攻めきる強みを発揮することが出来ています。
今日の大栄翔戦も決まり手こそ引き落としですが、前回まで対戦成績3連敗していたときのように腰を崩され、まともに引いてしまうのではなく、しっかり相手の突き放しを宛てがい、受け止めてから、余裕をもって左に開く形。こういう流れで相撲が取れているときの豪栄道には信用が置けます。
そんな大関にとって難関と成りそうなのが明日の朝乃山戦(対戦成績2連敗中)。左を意識するあまり、ずれ気味に左の深い上手を探るような立ち合いで胸が合ってしまっては完全に分が悪く、先ずはかましてくる相手の立ち合いに負けぬ鋭さで当たれるかどうか。前に出ながらもろ差し乃至右四つ左前廻しの得意型を作りたい。
貴景勝 5-0
まだ攻める方向が微妙にズレていたり、いなす際の体の開きが足りなかったりで、ぎこちなく見える場合も散見されますが、2場所休場明けの序盤と考えれば、白星がついてきていることも含め上々の出だしと言えるでしょう。
大関復帰については、残り五分で届く計算ですから近づきつつあるのは確か。中盤の入り口にあたる明日、好調遠藤は下半身の踏ん張りが効くという点で直近2連勝しているときのコンディションとは違うだけに、変わらぬ勝ち味で一方的に押し込めるようなら、さらに楽しみは広がっていきそうかなと。
遠藤 4-1
技術的な部分については当ブログで何度も言及していますし、今更アレコレありません。とにかく上位の土俵で2場所連続下半身の踏ん張りが効いた遠藤を見られることの価値は計り知れないなと、それだけを書きたかった(笑)
ひとまず明日の貴景勝戦、どれだけ通用するのかワクワクしています。
明生 4-1
先場所の上位挑戦で大いに揉まれ、下位から出直しの今場所は貫禄さえ感じる活躍ぶり。目の覚めるような速攻相撲だけではなく、昨日の阿武咲戦、今日の宝富士戦と状況に応じた理詰めの動きで相手を捌くような大人の取り口が出てきた。以前のようなバタ足も減り、家賃の安い地位で無理なく腰を安定させながら土台の崩れにくい相撲を取れているのは本当の地力がついた証拠ですし、阿武咲や宝富士を相手にそういうことを感じさせることのだから大したもの。
平幕では隠岐の海、妙義龍らも好調ですが、敢えて一人挙げるなら断然この人。今場所こそ技能賞の栄誉に浴してもらいたいと願っています。
※今日の鶴竜の一番について詳しく書いていたら疲れてしまったので、貴景勝以下はざっくり。まあ、明日以降も書ければ随時書いていくつもりなので…
鶴竜 4-1
昨日伝言板で書いた通り、反応は鋭いながら今ひとつ腰が安定せず攻めも上ずり加減で、相手を運び去る(攻めきる)だけの根拠に欠けているというのが正直な感想。4日間観て不安が消えぬままだったので一足早く触れてみたのですが、結果として今日敗れ、後出しにならなかったのは良かったのかどうか…
白鵬と同じように満身創痍で土俵に上がっていますから、状態良く場所に入ったとしても、いつどのタイミングで体に変調が起きてもおかしくない身。腰が悪いという先入観がある分、3日目の碧山戦で少し嫌な腰の入り方をしただとか少しの異変も目についてしまいますが、ともあれ万全とは言い難い体調で土俵に上がっていることは想像に難くありません。
今日の一番、立ち合いは右差し左前廻し狙いで立つも、(先場所とは違い)かまして立ってきた朝乃山の立ち合い良く、右を割り込みながら左でぐいっとばかり引っ張り込まれると忽ち上体が起きてしまう。右からの投げも左からの予備動作なく不十分な仕掛けで、呼び込んで左上手を許すわ左は巻き替えられないわで散々。万全の体勢で寄り詰める朝に対し、胸を合わされた鶴は抵抗できずに下がるだけ。俵を頼りにした右下手投げを捨て身の一手とするが、これも右を十分に返されているために左からの仕掛けなく、腕の力だけで打つような格好では残しようがありませんでした。
この横綱の主要な負けパターンと言えば、自分より大きい相手に引っ張り込まれて胸を合わされるか、角度良く押されてまともな引きを出してしまうか。それに加え、腰の不安を衝いた前後の揺さぶりも効きそう。
残りの対戦相手にそうしたタイプの難敵が多く、今日の相撲を観る限りあまり楽観できませんが、先場所の友風みたく相手の研究いかんもあるにせよ、一番は体調に合わせた取り口を纏め上げる自分自身との戦いでしょう。
豪栄道 4-1
現時点で「鶴竜と豪栄道どちらが好調か」と問われれば、即答で後者と答える。3日目苦手の遠藤に対し、悪い癖の左に固執する取り口で星を落としましたが、それ以外の相撲は踏み込み・出足ともに鋭く、止まらず攻めきる強みを発揮することが出来ています。
今日の大栄翔戦も決まり手こそ引き落としですが、前回まで対戦成績3連敗していたときのように腰を崩され、まともに引いてしまうのではなく、しっかり相手の突き放しを宛てがい、受け止めてから、余裕をもって左に開く形。こういう流れで相撲が取れているときの豪栄道には信用が置けます。
そんな大関にとって難関と成りそうなのが明日の朝乃山戦(対戦成績2連敗中)。左を意識するあまり、ずれ気味に左の深い上手を探るような立ち合いで胸が合ってしまっては完全に分が悪く、先ずはかましてくる相手の立ち合いに負けぬ鋭さで当たれるかどうか。前に出ながらもろ差し乃至右四つ左前廻しの得意型を作りたい。
貴景勝 5-0
まだ攻める方向が微妙にズレていたり、いなす際の体の開きが足りなかったりで、ぎこちなく見える場合も散見されますが、2場所休場明けの序盤と考えれば、白星がついてきていることも含め上々の出だしと言えるでしょう。
大関復帰については、残り五分で届く計算ですから近づきつつあるのは確か。中盤の入り口にあたる明日、好調遠藤は下半身の踏ん張りが効くという点で直近2連勝しているときのコンディションとは違うだけに、変わらぬ勝ち味で一方的に押し込めるようなら、さらに楽しみは広がっていきそうかなと。
遠藤 4-1
技術的な部分については当ブログで何度も言及していますし、今更アレコレありません。とにかく上位の土俵で2場所連続下半身の踏ん張りが効いた遠藤を見られることの価値は計り知れないなと、それだけを書きたかった(笑)
ひとまず明日の貴景勝戦、どれだけ通用するのかワクワクしています。
明生 4-1
先場所の上位挑戦で大いに揉まれ、下位から出直しの今場所は貫禄さえ感じる活躍ぶり。目の覚めるような速攻相撲だけではなく、昨日の阿武咲戦、今日の宝富士戦と状況に応じた理詰めの動きで相手を捌くような大人の取り口が出てきた。以前のようなバタ足も減り、家賃の安い地位で無理なく腰を安定させながら土台の崩れにくい相撲を取れているのは本当の地力がついた証拠ですし、阿武咲や宝富士を相手にそういうことを感じさせることのだから大したもの。
平幕では隠岐の海、妙義龍らも好調ですが、敢えて一人挙げるなら断然この人。今場所こそ技能賞の栄誉に浴してもらいたいと願っています。